トークショー打ち合わせ(前編) シャワーを浴びてから再びロビーに戻るとトークショーのゲストがすでに来ていた。北川女史から村上賢司さん(以下ムラケン)と司会役のラッシャーみよし氏(以下ラッシャー)を紹介される。ムラケンさんは、この前みた映画「妖怪大戦争」の豆腐小僧に似ているなと思った。こう言ってはなんだが、存在感が希薄な感じ。映画監督にしては気の弱そうな印象だ。それに対してラッシャーさんは押しが強そう。それなのに異様な親しみやすさを感じてしまうのは、この人がMだからだろうか。それに僕がよく利用している立体駐車場ビルの管理人さんにそっくりだ。お二人とも和み系キャラクターで、緊張していたはずの僕も、すぐに世間話でリラックスできた。
Eve 女王様がいないのね。まだ来てないのかな。ナヌ? 都合がつかなくて、来られないって?!
そりゃないヨ 有名なカリスマ女王様とついにご対面という期待感で高まっていたモチベーションが65%以上はダウンしてしまった。豆腐小僧と駐車場のオッちゃんだけなら
シャワー浴びる必要もなかったな( ← それはナゼ?)
北川女史も一応女王様なんだが、主催者代表だし、それこそ割烹亭のおかみさんみたいなものだから。(←だから、なんだ?)
ま、明日会えるんだからいいか。
それに美人プロデューサーがいる。(←だから、なんなの?)
その美人Pからトークショーの構成台本のようなものを渡される。それを見てラッシャーさんが「俺こんなにしゃべるの?」
A4サイズのドキュメントに横書きでびっしりと書き込まれたシナリオにはちょっと面食らった。
---- 「、」は1呼吸、「。」は2呼吸おく目安 ----
などと会話の「ま」に関しての指示まである。細かい。
北川女史の主催者挨拶から、司会者の前ワクまで、ショーのツカミの部分はしっかりとデザインされていた。閉めのコメントも用意されている。
「もちろんこの通りにしゃべって下さいということではありません。お好きなようにどんどんお話下さい」と美人P。
だが台本には「(...略)
なるべくラッシャーにマイクを戻さず、女王様の話に村上、Homer が突っ込みを入れる流れが望ましい」などとあるよ。この進行案やサンプルトークを考えたのが彼女なのだ。僕も構成台本を書いたことあるからわかるけど、本音とタテマエの部分はある。ここまで厳密に書いているからには、多少は台本どおりに進行して欲しいと思っているに違いない。特に 「、」と「。」 の呼吸の間は忠実に守らないと、後でお仕置きされるかもしれない。
この若くして聡明な女性は北川女史から全権を委任され、今回のイベントを製作総指揮している。特にトークショー関係では早い段階から中心的にコーディネートを担当していたようだ。ショーの段取りに関する説明は明快でわかりやすかった。声は昔のユーミンのように突き抜けたトーンで、
何か言われたら
絶対服従 じゃない、聴き惚れてしまいそう。
物腰はやわらかいのに、人の目をみてしっかりものを話すところに芯の強さを感じる。現代的で魅力的な女性だと思った。結局全体を通じて事務的な話しかできなかったのだが、S女さんなのかもしれない。具体的にはそういう仕草も言動もなかったけれど、
あのような目で見つめられると思わず
ひざまずいて 、じゃなくて、こちらの意見はなかなか言えるものではない。
本当はトークショーの構成に関してはもっと言いたいことがあったのだが、言えなかった。
いや、あえて言わないことを選択しようとしていた。本番では何が起こるかわからないし、これだけ一生懸命やっている彼女の思い描くイメージに協力できれば、それでいいや。そんなこと思いながら隣にいるラッシャーさんの手元をふと見ると、見覚えのあるドキュメントの束。なんと僕のブログを印刷して持ってきているよこの人。
「お馬さんごっこに関して、どこかで話振ったほうがいいですかね?」とラッシャー氏。
ドキン! その話は絶対にしてみたいけど、僕のブログがそこまで研究されているとは意外ですよ。さすが北川プロが選んだ司会者だけのことはある。ツボを押さえているではないか。ただの駐車場のおっちゃんではなかった。
そうだった。美人プロデューサーにうっとりしている場合ではない。アゴアシつきで有料イベントに出演するのである。お金を払って見に来るお客さんのためにも、自分の役割をきちんと果たさねばならない。頭を再起動して、この1週間僕なりに練ってきたトーキングポイントを、ダブルクリックした。
というわけで、以下次号につづく。