とてもユニークなM男動画を紹介しよう。
10分にも満たないショート・フィルム。
それでいて世界の見方が根源から変わってしまうぐらいパワフルな魅力に満ちている。
口を慎めという題名が、なんだか僕に言われているような気もして心に刺さる....(>_<)
主演男優は、
日本三大M男のお一人、
馬之介さん。

最初にお断りしておきますが、いわゆる「ヌケる」ような動画ではない。(人による)
そういう期待を持つなとは言わないし、みんなちがって、みんないいわけで、この種のブログ読者の皆さんに敬意を払う意味も込めて、あえて申し添えておきたい。18禁なのかどうかは不明。一応エロいことはエロい。
それから、動画を見る前に、あなたの
サウンド環境 をぜひご確認下さい。
この作品は音が命みたいなところがあって、スマホやタブレットであれば、高品質イヤホンか、静かな部屋で、PCならスピーカーに接続し、やや大きめのボリュームに設定されたい。
凄い音が出てくるわけではなく、その逆で、繊細な感性で微妙な音の録音・編集が丁寧になされており、それを意識して見ると、この作品の凄さが感じられるはずだ。ネット配信ではなく、サラウンド音響設備の整ったシアターで鑑賞したいと思わせる。
気分的にはゴダールとかベルイマン、フランソワ・トリュフォーの映画でも見るかのように、少し気取って、あんまり期待しないで(北川プロや三和出版のコンテンツとは別物)、穏やかな環境でご覧下さい。
それではどうぞ! 約9分弱と短いですが、この先長く、永遠に記憶に残る名作を!
さて、いかがだっただろう?
ヌーベルバーグの仏映画を思わせるようなイメージで、編集も凝っており、なかなかスタイリッシュな映像ではなかっただろうか。
これは「M男動画」というようなくくりではなく、まさに古き良き時代のシネマ、「映画」を思わせてくれる濃厚な味わいがある。
小津安二郎が
ピンク映画を撮ったら、こんな感じになるんじゃないかな。
それほど昔ではないけれど、
かつて新宿のピンクリでお目にかかったタマキン女王様もカメオ出演?していた。懐かしいなぁ(>_<)
彼女はそれ以前はラシオラのドミナでもあった。
(今もだが) コロナ禍の都内でSMセッションを行うという設定で、これといった物語性はなく、ごく日常的な場面でドキュメンタリー風につないで逝く。この撮影と編集が実に素晴らしい。
これを見ていると、COVID-19のパンデミックに置かれている社会的・日常的な状況が、従来からあった
BDSMの世界観とも共振していることに気づく。
例えばマスク着用の拘束感、ソーシャル・ディスタンスの違和感、行政指導の屈辱感など、聞こえてくるのは命令であり、支配であり、それらへの服従・・・って、アレ?そういえば!みたいな。
コロナ禍によって人々の生活は、いたるところでコントロールされ、いつの間にやら僕たちは、従順に調教されてしまっている。そして、もしかしたら、その不自由さや不都合な生活を、快楽とは言わないまでも、甘んじて受け入れざるを得ないところに、なんらかの特異点を探そうとしている。ゲーム感覚で、なかば楽しんでもいるかのように。
こうした「新ノーマル」と呼ばれている状況は、
BDSM愛好家やフェティッシュ界隈で生息している僕らにとっては、別に新しいことではなかった。慣れっこになっている感覚が、別のフェーズで現れているだけだ。
あるインタビューでこの作品の監督は、人類の傲慢な態度が、環境破壊や地球温暖化の問題を引き起こしているという文脈で「地球が人間に罰を与えている」と述べた後に、
「コロナが、私たちを調教している」とも言っていた。
なるほど。
そういう意識レベルでこの作品を見ると、「ヘンタイでよかった!」と思える福音になる。

この映画の最大の見どころは、たまきん女王様がラーメンを食べている一連のショットだ!
本当に美味しそうに食べている仕草が、なんとも言えないフェティッシュ感で2倍美味しい。

ここだけのハナシ、絶対に秘密ですが、僕はこのラーメンのシーンで2度ヌキました。
女性がラーメン食べてるとこ見てオナニーしたのは初めてだけど、チョー気持ちいい!
この監督の絵づくりは実に巧みで、観るものをそれぞれのイマジネーションの世界へと誘う。

キャストのパフォーマンスも一流だ。美味しそうに召し上がっております。
これは演技じゃできない。本当に美味しいんだろう。
監督も女優も「どうぞここで一発ヌイて下さい」とでも言わんばかりのオーラが出ている。

どこに
Fetishを感じるかは人それぞれで、みんなちがっていい。
しかし、タマキんがラーメン食べてるシーンには誰しも興奮するだろう。
春川ナミオさんが仰っていたように、女性が食事する口は真に美しいことをここで実感。
ラーメンすすり音と吊りプレイで使う滑車のノイズがオーバーラップするとこが僕は好きだ。
ちなみに、タマキんがラーメンをすすっているように聞こえる音は、実はあらかじめ監督が自分で食べる音によって、つまり観客に聴かせたい音として別に録音しておいた素材を、アフレコしたものだという。
そこまでするサウンド・トラックへの熱いコダワリが、僕を自慰へと導いたとも言える。
滑車とチェーンのノイズは、厨房の環境音とも絶妙なアンサンブルを聴かせてくれる。
食事の場面と、SMセッションの準備という、本来であれば異質なシーンが、フラッシュバックでごく自然に融合する不思議な感覚。
ややあって、馬之介さんがいつものあの姿で!四つん這いで登場。

これから女王様のところへ逝くんだ。 さすがサマになっているなぁ〜
馬之介さんはとっくに古希を過ぎていらっしゃるのに、昔から全然変わってない。
お肌艶ツヤ。動きもシャープだし中年未満、いやむしろ少年のようなあどけなさすら感じる。
そんな老マゾ先生が、若くて美しい女王様の調教を受けるという設定だけで萌える。

「ご調教お願いします」と、例によってあの台詞を言う。
タマキんがリモート検温機で、全頭マスクの上から熱をはかると、測定数値(36.5度C)が、フリップ表示された時、ここで、うかつにも爆笑してしまった。そう来ますか?
土下座している馬之介さんの目の前に、たまキンの脚。ハイヒールを顔の前でチラつかせる。
思わせぶりな脚線美のダンスが、馬之介さんを当惑させる。
たまきんの許可なく、思わず舐めてしまいそうになる気配の馬之介さん。
その気持ち、よくわかるんだ(>_<)
SMプレイでは、誰でもよく経験する場面だが、僕はこういう時間が大好きだ。
僕はたまにお許しの前に、舐めちゃうこともあるんだけど (。。)☆\バキ、何か問題ありましたでしょうか?
そこでまた、このフリップが尺をかせぐ。

一番上の英語を直訳すれば「私の舌は清潔か?」とでもなるだろうけど、すぐ下の和訳では「おキレイでしょうか?」と、まるで女王様の靴について触れているような印象も受ける。実際、馬之介さんは除菌スプレーを取り出して、ハイヒールを拭くシーンへとつながっていく。
まぁ、このご時世だから、お約束のような演出なんだろう。
東京都知事も見るかもしれないという想定だ。
でも、ここんところだけ、なんとなくフに落ちない。
一般的にご奉仕プレイの前には、リンスキンなどでお口をクチュクチュ濯ぐもので、つまり汚れた奴隷の舌で、聖なる尊い部分を汚して(舐めて)は如何なものか?という、エチケット精神が基本にある。もちろんそれ以前に、感染予防的な配慮が昔からあったのは言うまでもない。

このような、普通のマゾならみんなが意識していたコモン・センスを、コロナで一般ピープルも広く共有するようになった。
そんなコトはど〜でもいいかで、僕がここで言いたかったのは、チープな演出だとは内心思いつつも、不思議と安っぽくは見えないという点。
というか、むしろ全体的に上品なユーモアを感じるのは僕だけだろうか。

品格のある構成で、BDSM世界への暖かい眼差しが見える。
それと同時に、必然的とも言える哀愁も漂う。
悲哀と微笑み。まさに
BDSMの必須アイテムではなかろうか。
凝りに凝りまくった映像美の出来映えはいいとして、僕としては、このお二人のセッションのスタイルにこそ、より強い衝撃を受けた。
特にこれといって刺激的な場面はないのだが(人による)、い〜い感じでまったりしている。
結局は二人の息があっているかどうかで、セッションのクオリティは決まる。

イマジネーションとインスピレーション。
体験の記憶と、あるべき理想。リアルな日常とあり得ない妄想。
あらゆるものがごった煮となって、ラーメンの具のごとく、脳内にある舌で味わえる。
この作品は、フェティッシュな世界を理解する者には特にわかりやすいとは言えるが、それだけにとどまらず、もっと他の嗜好を持つ「旧ノーマル」な人々にも開かれた作品となっている。
奇しくも今回のパンデミックは、人々の心に、多様性を受け入れやすくする雰囲気と、その美徳を見いだすきっかけを与えてくれた。
僕もその中の一人かもしれないが、自己チューで非常識な人の多くが、「コロナだから」という理由で、普段はしなかったであろう自粛をする。
そのついでと言っては何だが、持続可能な社会実現に少しでも貢献してみようとか。
久しぶりにいいものを見せてもらった。
ラストで、シェイクスピアの「この世は舞台」みたいなアフォリズムが唐突に出てくる。

ここでツジツマを合わせるかのように、明日への希望も見えてくる仕掛けだよ。
アカデミー賞かノーベル賞ものと思うが、そこまで言わなくても せめてカンヌ映画祭ぐらいは狙って欲しい。その水準にはある。小振りだが本当によい作品だと思う。コロナ禍の今だからこそ見る価値があるし、多くの皆さんに共感して欲しいと願っている。
誰もがマイノリティとも言えなくもない、と思うのは傲慢だろうか。 最初にヌけない動画と記したが、ヌこうと思えばどこでも逝けるだろう(人による)
それでもヌけない時もある。
自分が老いたと思う。それが日々、実感される。
自分がどうであれ、あるいは他人がどうであれ、この地球という惑星で同じ時代に生息しているという、ただそれだけに過ぎなくても確実な共通点に、共感の可能性を模索し、寄り添う気持ちを大切にしたい。
前期高齢者になると、そんな思いにかられて、口を慎むことが難しくなってくる。
口は謹しむことは出来ても、心の中での感謝の気持ちだけは、慎しみたくないものだ。
このショート・フィルムの製作に関わった全ての方々に、感動をありがとう。
これはごく個人的な感じ方とは思うが、この作品の現場では、きっと馬之介さんのキャラが、この作品の核となっており、その磁場にいる監督やスタッフ、そしてタマキんも、理想的な特異点へと導く磁力のようなものが漂っていたような気がする。
馬之介さんの、可愛らしい笑顔で幕を閉じるエンディングで、しみじみとそう思った。
■ 女王様の地位向上の歴史 まだウブだった10年前、タマキン女王様の修行時代?
ごちそうさまでした!

2011年頃、新宿のピンククリスタルにて