
僕が初めて北川プロのオフィスを訪れた時、北川繚子さんは真っ先に春川ナミオの原画を見せてくれました。
20年以上も前からビデオのパッケージに使用されてきた、見覚えのある絵が、2冊のファイルに大切にしまわれていました。
デジタル時代以前の昔から、印刷用図版として使用され、何度も印刷会社や出版社などを行き来したのでしょうか、厚紙のベースは薄汚れ、ところどころ痛みも激しいその生原稿には、生き生きとした筆致の凄まじい迫力がありました。
鉛筆画の繊細な表現力に圧倒された。
春川作品の中でも珠玉のレベルといえるそれらのイラストは、北川プロのビデオパッケージとして使用されることを前提に春川さんが思い入れたっぷりに描き込んだもので、かつて「SMコレクター」などの雑誌に発表された他の作品とはまた違う、独特のテイストが感じられます。
ファイルの中には、全く見覚えのないイラストもありました。なぜかしらパッケージには使用されず、ずっとファイルに保管され続けてきたその絵は、お寿司屋さんで顔面騎乗をしている女性の絵でした。バーやカフェで顔面騎乗をしているの図はよくありますが、お寿司屋さんというのは珍しい。女神タイとか女王まぐろというメニューがユーモラス。また、和室で電話をかけながら顔面騎乗をしているイラストも目を引きました。これも未発表の原画です。
う~ん、これは素晴らしい。

おそらくは、ビデオパッケージとして使用するにはイメージ的に合わないと北川さんが判断されたのか、とにかくお蔵入りになっていたその絵に僕は目が釘付けになっていました。
僕の様子を傍らで見ていた北川さんは
「それ気に入ったなら、
あげるわ。どうぞお持ち帰り下さい」とおっしゃるではありませんか。
えぇ~?!?

そんなことがあり得るのだろうか?
イヤまさか、悪い冗談はよしこさんと思っていると、ファイルから抜き出してくれます。
信じられない。
ウソのようだが本当なのだ。

今もって信じられません。
このエピソードは前も書いてますが、「顔面騎乗に花束を!」の企画以前の話になります。
北川さんはまだ直接知り合って間もない僕に、僕が春川ナミオへの並々ならぬ思いを抱いているということだけを信頼して、貴重な原画を譲ってくれたのです。
北川さんが絵に愛着がないわけではなく、本当は手元においておきたいのだけれど、陽の目を見ずに埋もれさせておくよりは、僕のようなM男や他の愛好者のそばにあったほうが作品のためによいのだと、思ったのか思わなかったのか、とにかく彼女の気前の良さには、感動を通り越してあきれてしまいました。
しかし、まぎれもなく北川さんは春川ナミオの理解者であり、日本で一番最初に評価した女性(女王様)は、おそらく北川さんではなかったでしょうか。
描かれる絵の内容は、言わずもがなの世界ではありますが、その表現性、美意識やモチーフには古典的な芸術性を感じます。
ネットで見る72dpiの解像度ではわからない、オリジナルの美しさを、なんとかしてお伝えしたい。
今、そんな思いにとらわれています。
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