街の大きな書店に行くと、スティーブ・ジョブズ関連書籍で氾濫しているのに驚く。
すでにずいぶん以前からその種の本は多数あったけれど、最近になってやたらと出版されているのが自己啓発や仕事で成功するためのハウツーもの。
どうにも、これらがなんとなく胡散臭い。
はっきり言って、ジョブズのようなやり方で成功する人はいないから!
もし本気で真似しようものなら、人から嫌われ、自らも傷つき、失敗するのは明らかだ。
個人的にはよく知らないけれど、伝記などを読む限りにおいては、スティーブ・ジョブズという人は、実にイヤな野郎で、できることならおつきあいはしたくないタイプ。
彼の理想や実績の素晴しさは認めるにしても、ロール・モデルとしてのジョブズのキャラクターは、凡人が模倣するにはリスクが大き過ぎるし、無理だと思う。
にもかかわらず、学ぶべきところは多いのも事実。
その人にどんなに欠点があっても、必ずしもデメリットにならない好例ともいえる。
現実には欠点のない人間など存在しない。
欠点の全くない人には魅力が感じられないことのほうが多いように思う。
ジョブズにも欠点は多々あったが、彼独特の「現実歪曲フィールド」が巧みにそれを補い(ごまかし?)、持って生まれたカリスマ性と相まって多くの人びとを魅了することが出来た。
(もちろんそれ以上に嫌う人もたくさんいたに違いないのだが....)
だから欠点だらけの僕のような者には参考にはなるし、やはり憧れずにはいられない。
周囲と衝突しながらも己の信念を貫き、自由に生きようとした姿勢は共感を呼ぶ。
しかし、ジョブズの狂おしいほどのこだわりスタイルや、評価が低い相手への容赦ない接し方などを知ると、けして万人に推奨できるようなものではない。
おこがましいのを承知で言うと、ジョブズのネガティブな面は僕とも似ていると思った。
ジョブズには
自己愛性人格障害 の疑いがあるとされていたが、その診断基準(限りない空想、特別感、嫉妬、傲慢な態度...)の多くは僕にもあてはまっている。
僕だって若い頃は過激な理想に燃えてエネルギッシュに働いていた。
周囲と衝突しながらそこそこの実績は残してきたつもり
←それこそがゴーマンだっちゅうの (。。)☆\バキ ただ、僕にはジョブズのような才能もカリスマ性もなかったのに、やれると信じてアグレッシブな言動を繰り返し、様々な失敗も数多く経験した。

その結果学んだことは、ものごとを上手く進めるためには、仕事でもプライベートな人間関係でも、謙虚にならなければならないということ。
それまで自分のことをそれほど傲慢だとは思っていなかったのだけれども、そのこと自体が傲慢だということについ最近まで気づかなかった。
傲慢が許される人は限られている。例えばそれがスティーブ・ジョブズである。
平凡な人ほど謙虚さが大切なのだが、非凡なジョブズには必要なかった。
もしもスティーブ・ジョブズが謙虚な人だったなら、iPhoneや iPad も生まれなかっただろう。
異常なまでにクレイジーで、比類なき才能がなければ、宇宙をあっと言わせるほどの変革は実現できない。
ジョブズが傲慢であったからこそ、世界は変わったのだと言える。
平凡な人びとの日常的な仕事には、世界を変えるほどのインパクトは必要ない。
むしろ求められるのは変化しないこと、つまり安定なのかもしれない。
そうであるならば、仕事なんて憂鬱であたりまえ。
その憂鬱が避けられないから、僕たちは何かワクワクするようなことを追い求めてしまうのであろう。

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