
貴重なグラビアを発見しました。
昔のSM雑誌「SMセレクト」に連載されていた「拝啓クインローズ様」というシリーズ。
その歴代クィーンをまとめて特集したグラビアです(掲載年月日不明)

僕は年齢的にリアルタイムの読者ではありませんでしたが、子どもの頃、近所に捨てられていた古雑誌の中で偶然この「SMセレクト」を見つけました。
他にも「SMファン」
「SMキング」などといった多くのSM雑誌がありましたが、M男ものグラビアが掲載されていたのは唯一これだけで、鮮明な印象が残っています。
ただ、シリーズ・タイトルをずっと「
クィーンローズ」と勘違いしていた。


このシリーズは、まだ珍しかった女王様のグラビアとしては異例の息の長さで、他のSM雑誌と比較しても突出していた。
当時小学生だった僕は、
この雑誌にだけは必ず女王様グラビアが掲載されている ことをなぜか知っていた。

かろうじておこづかいで手に届く値段ではあったけど、子どもに買えるわけがない。
どこの本屋に行っても、これはたいていレジのすぐそばに陳列されており、立ち読みは困難でした。
子どもがそんな本に興味を示そうとすると、お店の人がハタキでぱたぱたと埃を払うように追っ払われてしまう時代。
そんな「サザエさん」に出てくるような場面を本当に経験しながら、会計待ちのほんの一瞬の隙をつき、手に取ってはこの「クインローズ」のページをチェックしていたものでした。

普通のヌードが載っているアダルト雑誌よりは「危険」な匂いのする禁断本のような雰囲気が子ども心にもなんとなくわかりました。
チラッと見かけるだけでも独特の緊張感が走ったのを覚えています。
「SMセレクト」は
「奇譚クラブ」や「裏窓」といった、戦後のカストリ誌が当局から受けていた弾圧のほとぼりが冷めはじめた頃、東京三世社から1970年に創刊されました。
70年代中頃からSM雑誌の出版ラッシュが始まりますが、その先駆け的な存在です。

この時期に雨後のタケノコのように乱立していたSM雑誌には安易なつくりのものも多かったのですが、「SMセレクト」はかなりしっかりとした読み応えがありました。
(*この当時の状況について、
マゾヒストの喜びのKazowkさんが
日本のマゾヒズム文献史で詳しく言及されています)
セレクト誌の初期の編集やモデル撮影時の緊縛には
須磨利之 が関わっていたらしく、奇譚クラブなどの正統派SM雑誌の遺伝子が引き継がれていたのだと思われます。
だからこそ、M男性読者向けの目配りがあったのであろうと納得がいく。
30年ほど昔の大学時代、高田馬場の古書店街でこの時代の「SMセレクト」誌を買いあさりましたが、僕が入手できたのは70年代後半あたりの5代目ぐらいからで、ここで紹介しているものは、あるマニア氏がスクラップしていた貴重な切り抜き写真の一部です。
なぜかその切り抜きには四代目がぬけている(>_<)
4代目は誰だったのか、どなたかご存知ないでしょうか?

なぎさ女王様は以前
マゾロポリタン美術館のほうで紹介しました。

今あらためてながめてみても、現代のマゾフォトよりは異様にパワフルです。
小説や女性緊縛写真など他のコンテンツにも、本当のマニアが納得する迫力が感じられる。
いつのまにかクイーンローズ・シリーズは終わっていたけれど、その後もシリーズ名を変え同じような構成で女王様とマゾ男性のプレイ写真を「SMセレクト」だけは掲載を続けました。
この種のグラビアが本当に希有な時代によく頑張っていたと思います。

企画のパクリは当たり前のこの業界で、なぜ他のSM誌がこれに追随しなかったのか不思議です。
M男モノなんて売れないだろうと思われていたのでしょうか。
そうであれば、「SMセレクト」には先見の明があった。
70年代後半から80年にかけて、数々のSM雑誌が創刊されては消えていく中、「SMセレクト」が20年間持ちこたえたのは、市場的には規模の小さいM男というマイノリティーも視野に入れた、丁寧で誠実な編集方針に負うているところが大きかったように思われるのです。
【Femdomメディア史】
■ SMセレクトのマゾ写真
■ 奇譚クラブのマゾフォト