SMクラブまで行って、カッコつけるのやめましょう。 このツイートは、僕とは無関係だが、まるで僕に言われたかのごとく、頭にガツ〜んときた...
SMクラブではイヤなこともされることがある。しかし、「いやなことをされる」のがいいのだ!という面があるのも確かだ。程度にもよるがギリギリ耐えられる直前の、さらに一歩手前ぐらいが丁度いいところだろうか。
どこで線引きがなされるかは、人それぞれ。信頼関係が構築されたセッションにおいてさえ、グレーゾーンの幅は曖昧で複雑だ。その幅が広い人もいれば、狭い人もいる。線引きが明確な場合もあれば、あやふやなこともあるだろう。お互いが認めるグレーゾーンの範囲内であれば楽しいSMプレイも、一歩でもその枠をはみ出すと不快で、下手すると危険なこともある。それでもパートナーを信頼し、愛し、崇拝していれば問題はないのかもしれない。
もうずいぶんと昔のこと、あるSMクラブで、僕がNG項目として伝えていたはずのプレイが、ノリの勢いで突然始まろうとしたことがあった。僕は思わずセーフ・ワードを発したが、その時の女王様はヤメてくれなかった。
最後の最後で、それこそギリギリのところではヤメてくれたのだが、それは僕の限界値を越えており、僕はショックで口も聞けなくなっていた。セッション終了後、「あなたがどこまで私を信頼してくれているかを試したのよ」と無邪気な女王様は言った。
「信頼関係なんか最初からないのに、ふざけたこと言うな!」と僕は失望と悲しみをこらえながら心の中で叫んでいた。僕は無言で身支度を終え、お礼も言わずにその場をあとにした。
深く傷ついた僕は、その後しばらくSMクラブに怖くて行けなくなってしまった。
僕は若くもなかったが、まだまだ未熟だった(30代後半)
あの時にもっと話あっておけばよかったのにと後悔している。今はその女王様を責める気にはなれない。きちんと自分の気持ちを正直に、いやなことはいやだと伝えることができていればよかったのにと反省している。
彼女は彼女なりに、僕のことを考えてセッションを組み立てていたのだと思う。しかし、彼女もはやり未熟だったと思う。(20代前半)
彼女は気軽に言うだろう。「じゃれあいのつもりだった」と。
僕にとっては、けしてそうではなかったことを知らずに、気づかずに...
どこまでが「じゃれあい」で、どこからが「イヂメ」になるのか。
それはいったい誰が決められるというのだろう。もし第三者がセッションを客観的に見ていたとして、判断できるのだろうか?そこが密室で他に誰もいなければ二人にしかわからないはず。その二人の認識にズレが生じる時、不幸は始まる。おそらく当事者にもわからないケースだってあるかもしれない。
あの頃はただ一生懸命、生きるのに精一杯だったような気がする。
余裕がなく、素直になれなかった。不必要にカッコつけていた。
SMクラブで、カッコつける必要などなかったのに。
どんなご縁か知らないけれど、たまたま肌を触れ合う機会を共有したのであれば、お互いに敬意を払い、深い信頼関係が築けるような努力をしてみることは、美しく生きていくために必要なことだと思う。
今の自分にそれができるかどうかはわからない。あれから、ずいぶんと長い時が流れた。
少しは上手くやれそうな気がする。
あの時の女王様は、今どうしているだろうか...
風の噂では、我が道を行くため、人気絶頂の折に惜しまれて引退したらしい。
もし可能ならば、あの時言えなかった言葉を伝えたい。
「ちょっと怖かったけど、かけがえのない思い出をありがとう」と。
■ 女王様からの手紙 ■ SMは風俗か? ■ SMは芸術? ■ ノーマルとアブノーマルの狭間で■ 女王様はわかってくれない■ SMを楽しむために■ SMクラブの仁義