アメリカのテレビドラマ「
BONES -骨は語る-」に、「お馬さんごっこ」が大きなテーマとして取り上げられているエピソードがあります。
この人気シリーズを知らない人のために一応書いておきますと、主人公は「骨から人物を特定する」有能な法人類学者ブレナン博士。FBI捜査官のブースからは(親しみを込めて?)「ボーンズ」(bonesは骨=boneの複数形)と呼ばれています。変死体や白骨遺体から犯人に結びつく手がかりや証拠を突き止め、ブースやその仲間たちと数々の難事件を解決していくという一話完結型のストーリー。
彼女のキャラクターとしては「物事を客観的に考え、それをそのまま言葉にしてしまう面・・・」(wikipedia)とあり、それが物議をかもしたり、場の雰囲気を壊してしまうようなお約束シーンが毎回登場します。
しかし、このエピソードではSMやお馬さんごっこに関して実に適確なコメントをしているので紹介したいと思います。
SEASON #3 第3話 「サラブレッドの最期」(Death in the Saddle)

猟奇的に殺害された遺体が発見される。手は前で縛られ、額に傷があり、鼻と唇に軟化剤が塗られて異常にテカっている。血痕をたどって行くと切断された足が埋められているのが見つかった。
検死の結果、鼻と口についていたのは馬用の日焼け止めクリームで、胃の中にはコーンと燕麦に乾燥糖蜜という馬の餌。馬用のはみをつけていたような傷も上顎の骨膜に見つかる。
遺体の指紋から、身元はエド・ミルナーと判明した。エドは「馬として」殺されたのだった。
*ちなみにアメリカには「ミスター・エド」という、馬がしゃべる古いドラマがあったりする(^^) 捜査を進めるうちに、被害者のエドは「お馬さんごっこ」の愛好家で、それ専用の秘密クラブじみたホテルに宿泊していたことが判明しました。

そのホテルでは24時間たっぷりとポニープレイが楽しめるのだという。
非協力的な宿のオーナーに案内されて、ブレナン博士とブース捜査官が目撃したのは・・・

BDSMのコスプレとしてはカワイイもの。ノーマル目線では異様な光景ではあろうか。
「股がって乗る」シーンが見たかった気もしますが、二足歩行の「ゆるめ」ポニープレイ集団の登場です。

ここからは、ブレナン博士とブース捜査官の会話を中心に構成していきます。
ブース:ペアで騎手と馬になりきっているのか? 嫌悪感を隠せないブースの発言 ↑ に対し、ブレナンは冷静に解説してくれてます。↓
ブレナン:これは支配と服従のプレイね。





淡々と「靴でオナニーを愉しむ人もいる」と解説するボーンズの言葉をさえぎって、ブースが宿のオーナーに尋ねる。

エドの「ご主人様」は、“アニー”と名のる女性。
エドとはネットで知り合い、相性のよいカップル(つまり騎手と馬)になった。
しかし事件の前日、二人のポニープレイはエドの妻に目撃されてしまったのだという……


アニーの「完ぺきな馬は珍しいの」という発言を聞いてブレナンがブースを見つめると...

「俺を見るな」とはブースの台詞 ↑






帰りの車の中での二人の会話。

アリストテレスもお馬さんごっこが好きだったということを語るブレナン博士。

馬役の別の男性が容疑者として浮かび上がってきたので、再び「お馬さんごっこ」の楽園ホテルへやってきた二人。

ブースの「変態ロデオか?」に、やや差別的口調を感じるが、まぁ、それはどうでもいいや。




この変態集団の中にはFBIの人間もいることを知って驚くブース。
ブレナンに「お馬さんごっこが好きなのか?」と恐る恐る尋ねるブースに彼女が答える。

性行為とはロールプレイであり、お馬さんごっこもその一つであるとは、いかにも科学者らしい見方ですね。
ブレナン:セックスでは皆、役割を演じている

ブース:俺は違う。ノーマルだ。

ブレナン:女を"美しい"と思う時点で対象化しているわ ブレナンのこの言葉は心にしみます。
対象化=崇拝に通じる概念で、つまり女性を好きになるのと、その女性の馬になりたいと願うのは同じということ。
言ってることは当たり前のことですが、科学的にこのように言われると目からウロコです。

女性の化粧は、男に「寝たい」と思わせるための対象化の行為だったのです。

客観的に観ると(あるいは主観的にも?)、お馬さんごっこもノーマルな性行為と本質的に変わらない。
ブレナンの言葉はクールに聞こえますが、変態への親しみというか好意的な態度すら感じられる。
アメリカのテレビドラマ、特に犯罪、裁判モノにSMの類いが登場する時には、多くの場合キワモノ扱いで見下されているような印象が多い中で、この作品ではまっとうに描かれています。何だか救われたような気持ちになります。
ちょっと「変人」という設定のブレナンに言わせているという点で、少しヒネリを効かせたような演出ですが、彼女の言っていることは全て真実。
性犯罪の多くは加害者の性的嗜好と密接に関わっている。その嗜好や性癖が異常なら、犯罪もアブノーマルであり、ノーマルな人々の理解を超えていると見られがち。しかし必ずしもそうではないのだという一面もあるでしょう。
そもそも犯罪そのものが異常なのであって、動機や状況に当事者の性格や個性が関わってくるのは当然のことです。加害者(または容疑者)の性的嗜好を偏見なしに、もっと冷静に見つめるべきなのです。
ネタバレになるのでもうこれ以上は書きませんが、ドラマとして事件の「落ち」には、まぁ、かろうじて納得のいくものがありました。しかし、それは僕が馬派Mだからなのでしょうか。サスペンスや謎解き、エンターテインメント性で見るなら意見が分かれるところかもしれません。
もしかしたら、ノーマルな人には不可解な結末に映っているのな?
ウ〜ん、どうなんでしょう・・・
愛とは何か? 人を愛すること、愛し合うことの真実を問うようなエンディングはお決まりのコース。
おさまり具合の良さを強調するために、お馬さんごっこをダシに使ったようなシナリオで、ブースはこの類いのロールプレイに真実の愛はないと批判する。ブレナンもこのラストシーンでは珍しくそれに同意した。
ぼくは、そこのところだけ気にいらない。愛の形態は人それぞれ。
お馬さんごっこにも真実の愛はある。 逆に言えば、
ノーマルな性行為にも、噓の愛がある。 ちょっと大きなレンタル店にならたいてい置いてあると思います。
馬派Mのみならず、「ロールプレイ」として女王様を演じる職業的ドミナや真性S女性にもおすすめのエピソードですので、よろしければご覧になってみて下さい。
あ、もちろんノーマルな皆さんもぜひご覧下さい(^^)
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