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マゾヒズムに花束を!

恥ずかしくて、ためになる情報発信 Female Domination & BDSM

月別アーカイブ  [ 2016年04月 ] 

緊縛事故について 

現代緊縛入門

 「ごめんなさい、ごめんなさい」と、その新人女王様は泣きそうになりながら、僕の二の腕をマッサージしていた。

 こんなことになるんだったら、緊縛をお願いするんじゃなかった・・・

 10年ぐらい前、SMクラブのプレイルームで、マヒして動かなくなった左手を見つめながら、僕はぼんやりと心の中でつぶやいていた。

 昔は常識ある人だけしかSMをやらなかったので、こういうことは起こらなかったのだろう。

 仮に非常識な人でも、相当の覚悟でもって、少なくとも慎重に行うという理性があった。

 怪我やトラブルが発生しても、大人の流儀で良識的に処理され、稀に訴訟問題になった話も聞きますが、原則として自己責任であり、多くは表沙汰にはならなかったのだと思う。

 最近は誰もが軽はずみにやろうとするので、トラブルになるリスクが増えているように思う。

 自動車の運転と一緒で、やる人間が増えれば、事故も増えるだろう。

 「緊縛講習受けました〜」などと言って、いい気になっているS女のように、手取り足取りで丁寧に教えてもらった「ユルい」縛り方では危なっかしい。

 例えば、氷室イブさんの技術は、今年亡くなられた縄師の雪村春樹に自らが縛られながら現場で目撃し、肌で感じて「盗む」という次元による、真剣勝負で習得されたものでした。

 まさに伝統芸能の巧みの世界。カルチャー教室で教わるようなおママゴトレベルとは違う。

 十年前の僕も、ママゴト程度に甘く考えていた。

 さらに言うなら、僕は非常識だった(今もだが)

 ガチガチに縛られて、女王様に虐められてみたい。漠然とそれぐらの感じだった。

 身勝手な欲望が、常識を吹き飛ばしていた。

 あの時は30分ぐらいマッサージされてやや回復したけれど、マヒはとれず、家に戻ってもドアのノブをしっかりと掴んで回すことができなかった。

 右利きだし、まあいいや、そのうち治るだろうと。

 ところが、深夜になってパソコンのキーボードを打とうとする時に深刻な影響が出て愕然とする。

 翌朝すぐに、かかりつけの病院に行った。

 橈骨神経症。

 初めて聞く病名にびびりながら、長年の付き合いのある主治医に「遊びで縛られてこうなった」と僕は正直に告白した。治りたい一心で羞恥心はどこかに飛んでいた。それぐらい動揺しており、あるいは絶望していたのかもしれない。

 電気治療と2週間ぐらいのリハビリで一応は治ったかに見えたが、明らかに右手とは異なる違和感が少し残っていました。女王様は何かあったら連絡して欲しいと、電話番号を僕に教えてくれていた。

 僕は「たいしたことない。完治した」と伝え、その女王様とはそれっきりとなりました。

 これは自業自得だし、何らかの後遺症が残ったとしても、彼女を恨む気は全くありません。

 もちろん補償を求めようなんて発想すらない。

 ただ、縛られてみたいという願望のファンタジーは、消えていました。

 今でも時々、左手の握力が落ち込み、指先の感覚が少しおかしくなる。

 そういう時、あの時の記憶が鮮明に思い浮かびます。

 動揺したり緊張すると、指先がかゆいような、しびれるような感覚が現れ、手を握ったり開いたりするクセがついてしまった。

 この軽くシビレるような奇妙な感覚が、必死になって僕の腕をマッサージしていた女王様の姿を映し出す。

 SMの女王様として大好きだった彼女のことが気の毒でなりませんでした。

 縛った人間が悪いわけではない。

 やらせたのは僕なのだ。

 彼女は共犯者とは言えるかもしれないが、主犯は僕。

 非常識だった自分への自己嫌悪。

 なかったことにしたい思い出とは、こういうものです。

 それまで緊縛されることにちょっとしたファンタジーや魅力を感じていたのに、この記憶が心のブレーキをかける。日常生活に支障はなく、今はキーボードも問題なく打てます。

 特にどうってコトはないのですが、なんとなく気になる微妙な感覚。

 リセットしたつもりでも記憶から消せないしびれが、切なく僕を苦しめる。

 以前、北川プロの作品にも出演したことのある青山夏樹さんが「現代緊縛入門」という本を最近出版されました。


 内容的に特に新しいものはなく、

 書かれているのは、当たり前なことばかり。

 しかし、コスプレの延長で、気軽に縛りをやってみたりする若者たちが急増する昨今、こういう「常識」をあえてわかりやすく解説する教科書みたいな本も必要なのだろう。

 SMが好きで、これから緊縛をやってみようかなという若い人たち、あるいはすでに体験してオッケーだと思っている人たちには、ためになる本です。

 僕にとってこれまで封印していたツラいエピソードで、あまりためにならないとは思いましたが、この本に敬意を表し、思いきって文章にしてみました。

 縄で縛られるということには、危険がつきもの。

 これは縛る側にも言えます。

 そこをきちんと理解した上で、お互いに納得して、緊縛プレイを楽しまれて頂きたいです。

 SMは愉しいからといって、遊び感覚でやるものではないと思う。

 鞭でも顔面騎乗でも、あらゆるSMプレイには、ある種のリスクが伴うということです。

 たとえ合意の上でも、危険な共犯者になる覚悟がいる。

 あれ以来僕は、初対面の女王様には「すみませんが緊縛NGで」とお願いしています。

 どういうわけだか、僕がいいネ!と思える女王様は緊縛が好きで、得意だったりする。

 また、明らかに必要ないかとも思われる場合でも「セーフワード」は決めさせて頂いてます。

 最近の若い女王様には「そんなの必要ないわよ」という人もいる。

 僕は「うん、そうだね。たぶん使うことはないと思うけど、一応決めておこう」

 このつまらない体験を話すことはなく、今まで誰にも話したことはありません。

 ただ、「セーフ・ワードは○△□○ってことで(^^)」となし崩しに言っておく。

 ちょっとした緊張感を維持するための、おまじないのような気もする。

 セーフ・ワードを使ったことはない。

 過去にちょっとぐらい痛い目にあったから、用心深くなっているわけではありません。

 万が一、何かやらかしてしまうかもしれない、そそっかしい女王様のために、彼女に気まずい、つらい思いをさせたくないがゆえの、ささやかな気配りです。

 まぁ、ソフトなフェチプレイしか依頼していないのに、「バカじゃないのこのマゾ?」と女王様に蔑みの目で見られるのも、なかなか恥ずかしくて、よかったりする(>_<)


 どうでもいいか、そんなコト。




■ 健全なマゾヒズム 現場でイニシャティブを握るサディズム側に、より確かな健全性が求められるという話


■ 緊縛の文化史・日本人の知らない日本美
緊縛の文化史 表紙


■ 男性緊縛美
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[ 2016/04/23 20:16 ] マゾの本棚 | トラックバック(-) | CM(9)


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筆者に宿る仮想人格:homer



 自分に素直になりたい!そう願っているひねくれ者なのかもしれません。平凡で小市民的な暮らしを営む一方で、過激な妄想世界を漂う、無意識過剰の仮性マゾ。



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