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マゾヒズムに花束を!

恥ずかしくて、ためになる情報発信 Female Domination & BDSM

完全希望調教とはなんぞや? 

M-san_HouchiPlay

 「エムさん」を読んでいると、独特のこだわりと哲学が登場します。

 まともな神経では理解に苦しむ意味不明さの中にも、視野を広げてくれる貴重なきっかけが潜んでいる。僕のように、つねづねマゾヒズムの哲学に深く思いをひそめている者には、それが心に刺さる。

 「希望調教」という、SMの世界では昔から知られている概念があります。

 しかし、その意味するところはあまり明確には知られていないような気がする。

 一般的には、「女王様から調教されるのを希望する」ということなのでしょう。

 より正確には、マゾが希望することに限って調教をお願いする。

 ここで言う調教というのは、不本意なことでも強制されて行うことに快楽を感じる倒錯です。

 「希望しない調教」を好むマゾは、その「希望しない項目」を希望しているわけです。

 澁澤龍彦的にペダンティックな表現をするなら、精神が肉体の共犯者となり、魂が屈服する。

 しかし本当に不本意なことはやっぱりイヤなので、許容範囲内でという条件付き。

 希望する内容で支配され服従する

 ある意味で矛盾したプレイとも言えるでしょう。

 今さら言うまでもなく、そういう矛盾に満ち満ちているのがSM本来の姿。

 言葉を裏返せば「希望しない調教可能」なわけでもある。

 イヤだけどいい(>_<) その曖昧なグレーゾーンを見極めるのが難しい世界です。

 SMクラブの女王様は、無限に広がるその曖昧領域を見極めるプロ。

 相当ハイレベルな接遇のスキルが求められます。

 高級で上等な接客は、しかるべき場所で多額のお金を払えば受けられると思われているようです。

 しかし高度でありながら、意図的にレベルを下げるような手抜きサービスというのは、要求してもなかなか実現されにくい、かなり難しい接客ではないでしょうか。

 風俗業界で就活される女性が、よく「楽そうだから」とSMクラブの女王様を安易にイメージされる風潮が見られますが、とんでもない誤解です。

 「手抜き」という表現が適切ではないのかもしれませんが、その人にハイレベルな接客のスキルがあるのに、あえて低レベルなサービスをさせるというのは、わけがわからない上に相当メンドクサイ。

 エゴマゾによる意味不明なストーリー・プレイには、この種のものが多い。

 放置プレイや人間家具(便器ではない)などは、何がどのタイミングで希望を叶えているのか?

 それを言葉で単純には説明できない。

 SMプレイにおけるストーリーは、たんなる設定やコスチュームだけではなく、人間の感情に触れる微妙な演出が含まれる。だから、台本どおりに台詞を正確に言えばよいというものではありません。

 もっと複雑で高度な満足感がこのプレイには期待されているのです。

 それは、台本のト書きに書けるような具体的指示で実現されない。

 その実現が困難であるから、「完全希望調教不可」などと明記せざるを得ないのです。

 エロ目的のスケベな欲望を封じるのとは別に、もう一つの意味がある。

 「本当は希望を叶えてあげたいのですが、難しいです」

 これが、このメッセージの真意だと僕は思っています。

 ズバリ「局部奉仕不可」と名言している女王様もいます。
 
M-san_Option.jpg

 その一方で、オプションで認めている女王様もいる。

 問題になるのは、鞭で打ったり、縛ったりという肉体の支配ではなくて、魂の誘惑。

 精神的に屈服する(屈服させてもらう)ことの難しさ、その重要性をプレイヤーがお互いにきちんと認識しないまま、不用意にストーリープレイを行うと、その劇は破綻します。

 文字通りの茶番劇となってしまうことが多いですが、筋立てがおかしくなってもある程度の納得というか、満足できてしまうのもこのプレイの不思議な魅力です。

 お芝居では、つまり実際に本番の舞台では予期せぬハプニングやアドリブによって、想定外の感動が得られることもあるからです。

M-san_such_an_eye

 エムさん(の作者)はおそらく、誠実に己の願望をカミングアウトし、「物語」としての依頼内容を伝えたのにも関わらず、その不完全なお芝居の結末に失望したことがあるのかもしれません。

 しかし、「完全な希望」の実現以前に、思いがけない「不完全な希望」が実現され、そちらの方がよかったという発見もあった。

 それまで眠っていた別のマゾヒズムが覚醒し、新しい快感を得たことにより、より深くて複雑な倒錯にのめり込んでいったのではないかと推察されるのです。

 SMの奥深く、そして悩ましい点は、常にワンパターンな性風俗的快感を求めるのでなく、それまで知らなかった新たな感動に出会える可能性にあるような気はする。気がするだけですが。

 それでも、

 嫌なものはイヤなのです(>_<)、と

 絶対に冒険しないマゾも、いるにはいる。

 少なくとも、希望しないことにはその希望は実現されない・・・

 しかし勇気を出して希望すれば、それが例え面倒な、面倒くさい、わかりにくい、意味不明なエゴマゾのワガママであったとしても、誠実に対応して下さろうとする女王様もいらっしゃるのです。

 そのように信じているのですが、何か間違ってますでしょうか?


「エムさん」単行本好評発売中!
エムさん発売






[ 2016/08/24 18:30 ] 完全希望調教メニュー | トラックバック(-) | CM(6)

きれいは汚い、汚いはきれい 

足の裏舐め

 これまでナイショにしてましたが、僕は女王様の足の裏を舐めたい人です(>_<)

 ただ、そこまでピン・ポイント指定でハッキリとお願いしたことはありません。

 プレイ前のカウンセリングや希望内容の打ち合わせでは、

 あの・・・、もしよろしければですが、気がむかないようでしたら結構なのですけれど、可能であれば、
「跪いて足をお舐め!」と命令して下さい(>_<)


 とかナントカ、曖昧に漠然とごまかし、核心的な表現はなるべく使わない。

 
そうはいっても、結局「命令して下さい」と命令してるようなもので、気がひける(>_<)


 まぁ、口では言えないけど、今ならこんなGIF画像を「これスゴいですよね!」とか言って見せるでしょう。

 
tumblr_o99z2nViwQ1rm35woo4_500.gif
魂胆がミエミエなんだよ (。。)☆\バキ


 でも特に何も言わなくても、足で顔を踏まれたり、口の中に足突っ込まれたりする。

 女王様は全てお見通し。

 ドサクサにまぎれて足の裏だろうが太ももだろうが、舐めさせて頂けるチャンスは多い。

 しかし、こんな台詞は口が裂けても言えません(>_<) ↓

エムさん_足の裏

「風呂入れ」ってか?

アリエナイでしょ!

女王様と一緒に風呂入りたい(>_<) ←もっとありえないから (。。)☆\バキ



昔はよくあったんだけどネ
Tongue_2b.jpg


 M男なら誰でもそうだが、舐めさせて頂く女王様の足は清潔であって欲しいと思う。
 
(匂いフェチなど特定の性癖がある場合をのぞく)


 女王様だってそれがわかっているから、プレイ前はいつも身体をきれいに洗っています。
 
M-san_foot_Fetish_2.jpg

 きれいにしているのに「臭い」と言われたら、ちょっと傷つく女王様もいるかもしれない。

 僕は特に臭いのがきらいというわけでもないですが(ここら辺ビミョーだ)どちらかというと「無味無臭系」がよろしいかと思います。

 でもまぁ、病気にはなりたくないから、なるべく清潔な状態であって欲しい気はする。


 土踏まずの部分は、地面触れてないだけに意外ときれい
tumblr_o99z2nViwQ1rm35woo8_400.gif
足指の間はけっこう強烈な匂いする時があります(>_<) どうでもいいか。


 「清潔で透明感ある体臭」が好きですね。 ( ← どんな匂いや?)

 そこを逆手にとって「臭いのが好きなんだろ?」って言わせるストーリプレイは想定外で、

  そういう言葉責めもあったのか!
 と感激しました。

 この倒錯のこじれ方は、普通のようで普通じゃない。

 いや、もしかしたらありがちな、定番の屈折なのかも・・・?


 それにしましてもエムさん(M男)にも様々なタイプがあるなぁと、感心します。


WEB漫画「エムさん」の作者のTwitter
mu0FNhks_400x400.jpg

 単行本がいよいよ明日 22日発売!


絶対に秘密ですが、僕は買いに行きますよ! 



 亭マゾを買いに行く時よりは、なぜか恥ずかしくないのはナゼだろう?...






 * きれいは汚い、汚いはきれい  
シェイクスピアの「マクベス」 第1幕に出てくる台詞


[ 2016/08/21 11:56 ] 心にしみる言葉 | トラックバック(-) | CM(3)

「エムさん」が街の本屋さんで発売? 


 別にこれまで隠していたわけではないのですが、「エムさん」というネット・コミックを楽しみに読んでいます。

M-san_001.jpg

 嗜好のツボが僕とかなり違うけれども、ストライクゾーンのかぶっているところもある。

 M男なら誰でもそうだが、

 街で見かけた美少女を勝手に自分だけの女王様に仕立てる妄想をします。

 しかし、その自分に対する無関心ぶりを「仮想放置プレイ」にしてしまうなんて、かなり高等なファンタジー。

 普通は後ろ姿(というよりお尻から太ももにかけて)を見つめて

女子高生の後ろ姿

もし、このお尻で顔面騎乗されたなら、 (*´Д`)ハァハァ 


 と想像するものです。

普通はしないって ↑

普通はこうですね ↓
エムさん_視姦
*別の作品です


 例えば、鏡というのはSMプレイにおいて重要なアイテムとなります。

エムさん_鏡のナルシシズム

 以前、「鏡のナルシシズム」というエントリーでも触れたように、写っている自分の姿に萌えるのでなく、崇拝する女神様とのツーショットであることがポイント。

in_front_of_mirror_1.jpg


 「毛皮を着たヴィーナス」で女主人のワンダと奴隷ゼヴェーリンのSMプレイ中にこんなシーンがある。

 部屋の奥にある鏡に写った二人の姿にゼヴェーリンが声をあげ、ワンダがそれを見て

 「残念ね、この瞬間は絵には残しておけないのね」 と言う。

 自縛した緊縛写真をセルフタイマーで撮影する「自縛撮り」のように、完全な独りナルシシズムと違って、やはり女王様とのインタラクティブなやり取りの中において、己の惨めな姿を再確認するというのが王道なのです。

 
王道と言えるほどのことなのか? ↑


エムさん_身長差

 「亭マゾ」がいくら実話を元にしてるとはいえ、やはり一般的には非現実的な夢物語。

 そういう点では、「エムさん」の世界は、わりとリアルで身近に感じる。

 SMは風俗と割り切り、女王様をある意味で「風俗嬢」とみなすドライな視点が、僕にとっては衝撃でした。

 意味不明とも言える自虐ネタで、世間の理解を越えるマゾヒズムの心理を、わかりやすく解説している点で秀逸。

 自分の性癖をここまで冷静に見つめる態度は、

 保守的な劣等感からは、一つ大きく突き抜けた革新性が漂う。

 M性感やSMクラブに行くことを自らの癒しのツールと位置づけ、その恩恵により健全な生活を維持する。

エムさんはMなので

 そういう人は昔からいたし、僕もその一人なのですが、「エムさん」的人格は病んでいるようでいて、そもそも病理が飽和状態にある現代の格差社会に適合した突然変異のよう。

 そして、あらゆる変態に献身的なお・も・て・な・しで接遇することのできる女王様は、ストレスがどこよりも充満している都会というアリ地獄の天使だ。

ShortHope.jpg


 未だにSMクラブに足を運ぶのには、ビギナー時代の背徳感を引きずっている自分が恥ずかしくなります。

 エンターテイメントとしての出来もよく、マゾならではの笑えるオチにも好感が持てるのですが、これならば一般ノーマルな人々の共感をも呼ぶでしょう。

 独特のコダワリを主張しているようでいて、「SMとはこういうもの」という枠にとらわれる考え方が、実はナンセンスであることに気づかされます。

 SM原理主義ではなく、変態自由平和主義です!

 このように素晴らしいコンテンツを、ネットでコソコソ見るんじゃなくて、紀伊国屋書店で立ち読みでもしたいものだなぁ〜と思っていた矢先、なんと!この作品も紙メディアで出版されることになったそうで、ちょっとびっくりしました。「亭マゾ」のように若い女性に売れそうとは思えないのですが、僕のようなオールドタイプには嬉しいニュース。

 単行本用に書き下ろした新作の中編とエッセイコミックが追加されるそうです。

 マウスでクリックしたり、スワップして次ページに逝くのはかったるい。

 僕は「手に触れて、ページをめくり」フェチなのです。

毛皮を着たヴィーナス_本
 やっぱりズシリと重さを感じて、指先でページをめくりたいよね(>_<)

 この感覚は、顔面騎乗されている時に、両手で女王様のお尻の谷(山?)を鷲掴みにしたい気持とよく似ている。

↑ 似てネーから  (。。)☆\バキ


eichan_#201

 別にお尻を触りたいのではありません(>_<)

 息が苦しい時に、呼吸のために少し隙間をあけたいだけなのです (。。)☆\バキ


 そんなコトはどうでもよくて、

単行本「エムさん」は8月22日発売開始!

エムさん



 エムさんは、どこにでもいる普通のオタクであり、微笑ましいマゾとして応援して逝きたい!

エムさん_言葉責め
   言葉責めも高度や(>_<)




■ SMプレイ前は、全裸か着衣か?
「エムさん」じゃあ、服脱いで


■ 鏡のナルシズム(初級編)
鏡s



■ 鏡とマゾヒズム
鏡_2



■ 男としては最低で、M男としては最高の瞬間




[ 2016/08/19 18:09 ] BdSmマンガ夜話 | トラックバック(-) | CM(7)

鬼六まつり '96「外道の群れ」 

外道の群れ

 久しぶりにお盆休みで帰省し、実家でくつろいでいた時、押し入れの奥にしまってあった伊藤晴雨の責め絵画集や自伝と一緒に、団鬼六さんの「外道の群れ」を見つけて懐かしく読んでいました。(鬼六本は他のセクションにまとめてるのですが、この本だけ伊藤晴雨のカテゴリーに入れてあった)

 これはSM小説ではなく伊藤晴雨の評伝で、近代日本SM史の貴重な文献資料ともいえます。

 その翌日、偶然にも北川繚子さんのブログでこの「外道の群れ」の出版記念パーティーの模様が紹介されていました。


まるで能舞台を思わせる演出で、和装の女王様に跪いて足を舐める男
鬼六まつり_04
団鬼六というよりは、谷崎潤一郎が好む耽美的世界が繰り広げられる・・・


 これがものすご〜く懐かしい。というのも、このイベントを直接は知りませんが、この時に撮影された参加者限定の秘蔵映像を、北川プロの事務所で数年前に見たことがあるのです。暑い盛りに刈谷のガレージを改造した2階で、繚子さんの解説つきという贅沢な状況で・・・
 
 「鬼六まつり」という、今からちょうど20年前に行われた伝説的なイベントは、明智伝鬼や朝霧リエさんなど、当時の(今でも)SM業界の大御所的キーパーソンが集結していました。


 左にシャネルさん。一番右がリエさん。その左隣はお尻が悩ましいキョロ女王様か?
鬼六まつり_01


 新宿の大きなキャバレーが会場で、芸能界やマスコミの知る人ぞ知るといった顔ぶれもチラホラとお見かけました。

 三味線や尺八、獅子舞などの和風の演出でステージは賑わいを見せ始め、お約束の緊縛ショーに続き、後半では北川プロの女王様たちによるパフォーマンス(当時としては珍しい)いわゆる「M男調教ショー」が披露されました。
 
 これが実に素晴らしく、SMショーらしからぬ輝きを魅せる芸術的な舞台だったのです。


全体的に和もの構成なのに、リエさんだけボンデージのセクシールックで、なんか浮いていたような気がする...
鬼六まつり_朝霧リエ


 M男と女王様はほとんど登場しない団鬼六の世界で、なぜこのような演目が?と不思議に思ったものでした。

 SMが社会的にもタブー視されなくなりつつあり、女性緊縛系だけでなく、女流縄師がM男を責めるようなショーが少しずつ台頭してくる過渡期のイベントだったようです。


鬼六まつり_02


 鬼六さんも舞台挨拶をされている時、ボンデージ姿の女王様に絡まれたりしながら、なんとも嬉し恥ずかしそうな、楽しそうにされていたのが印象に残っています。

 この年(1996年)の翌年にラ・シオラがオープンした。
 
鬼六まつり_03

 北川プロで看板女優として活躍していた若かりし日のリエたんの姿がまぶPい〜(>_<)

 インターネットが加速的に普及しつつあった時代を背景に、SMをとりまく状況もダイナミックな勢いで渦巻いておりました。




「外道の群れ」幻冬舎
 「外道の群れ」は現在は幻冬舎文庫で入手可能



■ SMの女王様に市民権を与えたのは朝霧リエです
SMに市民権は与えたのは私です

■ 祝・ラシオラ15周年!

■ 今そこにある危機

   憧れの朝霧リエさんと

■ ラシオラのSM 朝霧リエの思想と美学

■ 団鬼六の伝記本「赦す人」発売 2012年12月5日付エントリー
■ SMキング/団鬼六責任編集SM雑誌

■ 団鬼六「死んでたまるか」
■ 往きて還らず

■ 春川ナミオの絵について  団鬼六よる春川ナミオのマゾ絵画評!

■ 花と蛇3
■ 団鬼六「SかMか」


■ 女は縛ると美しくなる
伊藤晴雨フォト

  女は縛ると美しくなる   ---伊藤晴雨---


■ 万華鏡〜抒情と緊縛
竹久夢二と伊藤晴雨  竹久夢二と伊藤晴雨の物語






[ 2016/08/17 16:00 ] 昔ネタ | トラックバック(-) | CM(6)

山田詠美「賢者の愛」のテレビドラマ化 

賢者の愛

 早くも今週末にオン・エアーされるそうで、楽しみ... ん〜でもないかナ。

 8月20日(土) WOWOWプレミアム 夜10時スタート

 毎度のことながら、原作を読んでから、その映像化されたものを観る時、ガッカリした経験が何度もあるからか、そう簡単に期待は出来なさそう。

 若い頃観た映画「痴人の愛」で、文芸作品の映画版は観るもんじゃなナいと思いました。

痴人の愛チラシ


 先に映画で観た「春琴抄」には感動したのに...(>_<) 山口百恵に (。。)☆\バキ

春琴抄


 しかし今回の場合は、

  原作には、それほど思い入れがない

 だけに、逆向きの期待は持てるのかもしれない。


 山田詠美の文体には、デビュー当初からも感じていた独特のテンポがあり、ついていくのがややシンドイなと昔から思っていました。のんびり屋の僕は、いつだってどの現代小説にもノリ遅れていたように思う。

 女王様やS女性には、テキパキとしたスピード感がよく似合う。

 少しのろまなマゾが必死についていく構図が萌えるのです。

 僕は年のせいか、最近何だか動きも感覚もとろくなってきました(>_<)

 大正時代のまったりした雰囲気(そんなのよく知らないけど)が身体に馴染む気がする。

 それはともかく、人間関係、特に男女関係というのはリズム感も重要だと思う(これをもしかして「バイブス」とも言うのかも?)

ゆ@様ツイート


 リズムが合えば調和し、美しいハーモニーを奏でる。

 回りにいる全ての聴衆が、それを心地よいと感じるかどうかは別問題なのですが。

 このリズム関係は恋人同士だけでなく、家族や親子、同性愛やSMの主従関係にも当てはまる。

 谷崎潤一郎の「痴人の愛」は、近代日本文学の古典的な位置づけとして僕は十代後半で読みました。内容云々の前に、自分のリズムで心地よく読めた作品として青春の思い出に残っています。

 「賢者の愛」はスマホ世代の若い人たちにはマイペースで読めるんじゃないかと思う。

 しかし、エヴァンゲリオンにあまり馴染みのない僕が「シンゴジラ」を観てシラケるのと同じような(ちょっと違うか?)違和感を、「賢者の愛」には抱きました。 

 この小説は「痴人の愛」への意趣返しというアイデアが面白く、山田詠美は谷崎潤一郎に喧嘩を売るつもりで書いたとどこかで言ってました。それはわかるけど、谷崎の(「痴人の愛」の)愛読者にもいちゃもんつけているような、そういう野心も見える。そこを理解して読むと、「じゃ、受けて立とうじゃないか」と、楽しめる作品にはなります。

賢者の愛

 山田詠美は大正時代の耽美主義を使って、現代風の官能小説を書こうとしているのです。

 ただ、新感覚の官能小説としてはまともすぎて、僕のリズムと合わずスムーズに入っていけなかった。

 僕は稲垣足穂とか夢野久作みたいな、あるいは沼正三といった、頭はいいハズなのに、

 頭がどうかしているとしか思えない

 まともではない作家の文章が大好きなので(>_<)

 山田詠美はそういう意味で、まともな作家です。

 この作品は、昨年が谷崎の没後50年で、今年が生誕130年ということで、それに合わせて(あえてケンカを売るような言い方をすると)営業的に執筆しただけというような気もしました。テレビ番組化が早かったのはそういうタイミングもあるのでしょう。

 谷崎のフンドシはいて相撲をとるみたいな。谷崎は山田のパンティーをはきたい(イヤ頭にかぶりたい?)かもですが、いずれにしても冥途で喜んでいると思われます。


 優れた原作の漫画化や舞台化、映像化作品への思い入れに腰が引けてしまうのは、高齢化による頑固なコダワリのせいかもしれない。

 この種の類いで稀に感動することも時にはあるにはある。

 数年前に舞台で観た演劇「沼正三/家畜人ヤプー」 がそれ。

 これは厳密に原作の舞台化ではなかったけれど、ものすご〜くよかったので感想をブログに書いておきました。

 家畜人ヤプーについては最近、官能劇画作家の三条友美氏によるREBOOTが話題になっています。
家畜人ヤプー


 いわゆるマゾヒズム文学がこのように注目されてしまうことに、素直に喜べないというか、なんとはなしに恥ずかしいように思うのは僕だけなんだろうか。

 昨年の「歴史秘話ヒストリア」中で放映された「痴人の愛」もよかったんだけど、NHKがこれやるっちゅうところに赤面してしまう(>_<)

あなたはボクの女神様_1

 もう一つ、谷崎作品の映像化で成功している例が「富美子の足」

富美子の足バナー

 耽美主義的な世界を映像化するのは難しい。それは一人ひとりの心象風景で皆違うものだから。

 マゾヒズムはそのコンテンツの一つです。


 僕は最初、山田詠美は男性マゾヒズムのなんたるかをわかってない!と思っていました。

 しかし、それは彼女だけでなく、僕自身も含めてみんなわかっていないし、わかったような顔をして好き勝手なことを言ってるにすぎないのです。


 だからこれは僕だけの独特の感じ方かもしれないのだけれど、谷崎文学のマゾヒズムは純愛であって控えめで、

 山田詠美のように強欲で激しいタイプとは真逆

  な感じがする。

 さらに言うなら、谷崎が純粋女性崇拝賛美論者で、山田は不純男性蔑視路線で書く。

 「賢者の愛」はマゾヒズム文学とは言えないし、まっとうな小説だから仕方ないのですが、老いぼれたおじさんの脳内には、ドーパミンがもうそれほど分泌されない。

 プラトニック・ラブで、告白も出来ないような女性に対して、お馬さんごっこや顔面騎乗を望む精神構造は、病んでいるのか認知症なのか、わけがわからない。

 谷崎も山田も時空を越えてある一つのテーマを共有しているようには思いました。

 それは「愚かな賢者」、あるいは「賢い愚か者」を描こうとしているのだ...と。

 愛だ欲だとゆう場合、きれいごとは言ってられない。

 醜いものを美しく。

 谷崎はそれを男性のマゾヒズムに、山田は女性のS性に托して描いた。

 どうでもいいか、そんなコト。


 せっかくドラマ映像化されることを知らせてくれた親切な読者の方に、なんだか申し訳ないような記事になってしまいましたが、何か問題ありましたでしょうか... (>_<)





【関連エントリー】

■ ひざまずいて足をお舐め(日本のSM文学)

■ 痴人の愛


■ 家畜人ヤプー

■ 寺山修司と三島由紀夫

■ サタミシュウの主従関係

■ 稲垣足穂





[ 2016/08/16 18:56 ] トピック | トラックバック(-) | CM(5)

マゾは「マゾ夫」になれるのか? 

チャーリブラウンの名言


 マゾヒストが、理想的な女王様に出会ったとしても、マゾ夫になれるとは限りません。

 崇拝しすぎて、もう結婚するしかない〜っ(>_<)

 てなほど好きになったとしても、現実的には

 SM関係を夫婦間に持ち込みたくない

 と願う諸兄もいらっしゃるのかと。

家じゃ女房も子供も待つてんだろ?

 どんなにマゾ夫になりたくても、夫の倒錯的性癖を認めてくれて、なおかつ敬意を持ちながら愛し、夫婦仲を継続できるS妻を見つけるのが至難の技だと思います。

 幸いにも相思相愛で結婚できたとしても、旦那さんがキモいM男とバレたら即離婚のリスク。

 よくて軽蔑され、別居。

 それを恐れるからこそ、M男は夜の生活で自らの性癖を隠し、SMクラブへと足を運ぶ。

やはり、月に1回ぐらいのSMプレイが関の山かも・・・
complecated_relations_SM-club.jpg


 まっとうな日常生活は維持しつつも、変態という非日常的な生活は外の別世界で過ごす。


 これが健全な紳士の営みとされてきました。

 亭主は元気でも、臆病で恥ずかしがり屋さんのマゾだったのです。

 そうではなく、夫婦間できちんとカミングアウトし、日常生活でも「女王様と奴隷」の関係を見事に実現されているのが、「ちょっぴりFemdom?」kaisubさんです。

 「ちょっぴり」と銘打つだけあり、Kai氏を「ドエム」と呼んでしまうのには抵抗があるのですが、翻訳されている海外のFemdomトピックからは、彼の心の奥底に潜むディープなマゾヒズム願望が垣間見えます。

 昔から「亭マゾ」であったKaiさんが、なんと以前僕がこのブログで紹介した「亭主元気でマゾがいい!」を読まれたそうで、その所感がBlogで述べられておりますので、ぜひご覧下さい。

亭主元気でマゾがいい!


 すでに長年に渡り「元気で健全なマゾ夫」を実践されてきたKai氏とっても、このコミックは衝撃的だったようで、大先輩ならではのコメントが興味深く印象的でした。

 今もまだそうだと思いますけれど、こういう話は日常的にはタブー視されてきた。
 
 ところが、「健全な夫婦生活をSM的に実践する」という逆向きの発想が「亭主元気でマゾがいい」で示され、そしてヒットしました。

 これは作品内容が衝撃的だったのではなく、

 ヒットしたという事実がたいへん画期的

 だったのではなかろうかと思います。

 もちろん、いいものがヒットするとは限らない。

 よくもわるくもそれは、大衆が無意識に嗅ぎ分けた価値観であり、「亭マゾ」で示されたライフスタイルが大々的に認めらたということです。

 マイノリティの権利や価値観を見直す動向が顕著になりつつある現代社会において、同性婚やこういうカップルの存在意義も見直されていく。

 子育て中の現役ミストレスも、肩身の狭い思いをしなくてもいい世の中がやってくる。

 学校で子どもたちが、「僕のパパはマゾで、お母さんが女王様なんだよ〜!」と大きな声で言える。

 「僕の将来の夢は、パパみたいないいマゾになることです!」

 こんなことが宣言できる時代が来るかもしれません。

 
↑ こないから


 マゾやM男が、素敵な女性と結婚を前提にお付き合いする前に、Femdom関係を前提に主従(恋愛?)関係を結ぶ。

 そして世界の中心でマゾを叫ぶ。

 マゾを隠すのでなく、マゾがマゾでいられることで女王様から好かれ、人々からも理解される社会がくるといいネ!

エムオトコの時代が来る

 *ネット版「亭主元気でマゾがいい!」は今年6月で最終回となりました。次回作に期待しております。




 
あんたはマゾよ1




【関連エントリー】


■ 女王様の亭主になりたい
マゾ亭

■「M男に市民権を与えるコミック・亭マゾ」
亭主元気でマゾがいい_表紙


【このマンガがスゴい!】
〜SMを考察するきっかけとなる過去の作品〜


奥さんを女王様にして家庭内のSMプレイが描かれた古き良き時代のコミック作品
 ↓
Sweet Marriage_Cover
Sweet Marriage(甘い結婚)
1993年に発行されていたマニア向けマイナーSM雑誌「Queens Express vol.3」



山岸 凉子「天人唐草」
草食系男子
おすすめ度 ★★★☆☆

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マゾのチャーリーブラウン








[ 2016/08/12 18:00 ] えすえむだけが人生だ | トラックバック(-) | CM(9)


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筆者に宿る仮想人格:homer



 自分に素直になりたい!そう願っているひねくれ者なのかもしれません。平凡で小市民的な暮らしを営む一方で、過激な妄想世界を漂う、無意識過剰の仮性マゾ。



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