La Siora ほど素敵なSMクラブはない。
長年にわたってお世話になり、楽しくて気持ちよい思い出の他にも、残念なことや悲しい記憶が残るのも事実だが、ラシオラは特別な存在として僕の心の中に君臨している。
ドミナ・スクールとも名づけられたそのSMクラブは、1997年の秋、代々木の高層マンション内でオープンした。

(開店後間もない頃の雑誌広告) マンションの施設内に豪華調教ルーム併設というその営業形態が法に触れ、2008年(平成20年)6月、たまたま地域住民からの苦情もあり摘発、
朝霧リエさんも逮捕。
制度改正の過渡期をまたいで、風営法に抵触はしたが、悪質なものではなく、誠実な対応に定評のある人気店だっただけに、マスコミにも散々叩かれ、社会的には抹殺されそうになった。
もはやこれまでか(>_<)と思われたものの、
奇蹟的に店は再起動を果たした。
退店、分散していたドミナ達も復帰して、ほぼ元どおり。
その後も有望な新人女王様が入店(と退店)を続け、今年めでたく20周年を迎えることに。
ラシオラがオープンする以前、僕は都内のSMクラブを転々と放浪していた。
どのSMクラブも誠実な「おもてなし」で迎えてくれてはいたと思うが、何かが違う。
ナントナクしっくりこないプレイを繰り返していた。

この世界、お店のシステムや値段ではなく、女王様の質やキャラクター、そして何よりも
相性という名の不可思議の方が大切なのだが、そもそもSMの何たるかを判っていなかった未熟な自分にとっては、模索と苦悩の日々が続いていた(今もだが)
ラシオラ、つまり朝霧さんの提案したシステム(というよりコンセプト)は、女性上位のM男専門店において、女王様と奴隷(の立場にあるM客)は対等であり、50対50の立ち位置、ポテンシャルからスタートする。
そこには、顧客側にありがちな上から目線もなく、ナンチャッテ女王様による勘違いもなし。
両者による敬意と誠意が歪に入り乱れた、ただならぬ雰囲気の中で、浮き世離れした大人の遊戯が始まる。
そして、SMプレイ(ラシオラでは「セッション」と呼ばれる)の過程で、FemDom 的な関係性を、お互いにリスペクトしながら築いて、信頼関係をベースとした支配と服従のドラマが展開されるのを理想とした。
プライベート調教なら当たり前ともいえるそれを、商業的に実現しようとするこの試みは、風俗業界においては画期的なニュースタイルとして議論を巻き起こしたが、コアなマニアには受け入れられ、ラシオラは真性・仮性を問わず、マゾヒストからの絶大な支持を得た。
しかし、僕のように軟弱なエゴマゾにとって、最初はぶっちゃけ
「何だよ、ソレ?」 みたいな?
お金払うんだから、きちんと
(顔面騎乗)やって下さいヨ(>_<) みたいな?
(。。)☆\バキ 少し距離を置きたい気分で眺めていたことも、正直につけ加えておこう。
その当時、圧倒的に近寄りがたいオーラを放っていた北川プロの、そのビデオ作品に看板女優としても活躍する有名なカリスマ女王様達が、オープン当初は在籍されていたこともその理由の一つ。
SMに関してはズブのど素人だった僕にとって(今もだが)、ラシオラや北川プロは別世界、遥か遠いところにあった。
恐るおそる遠巻きに見つめながらも、朝霧さんの理想と価値観には惹かれるものがあり、それを理解したいとは願っていたのだが・・・
しかし、「しばらく様子見かも鴨川」と思いながら、心の底では避けていたのかもしれない。
その一方で、興味はあるけれどSM未経験の若いS女性も(さながら自己啓発的に)、朝霧さんの求心力のもと集まって来る。
そうした将来性のある「女王様未満」の
原石を磨こうとする人材育成も、彼女の目指すところであった。
SMの女王様に市民権を与えたのは朝霧リエさんです! 僕が初めてラシオラでプレイした時のドミナは、入店したばかりの新人さんで、初々しいというよりは、
危なっかしいという感じ。
プレイの最中、時々フリーズして動かなくなる。
ズラリとお道具並べたのはいいけれど、「さて、私はこれからナニやるんだっけ?」と呆然としている。
あるいは、並べたはずの道具で使いたいものが見つからず、テンパっているかのような?
その間があまりにも長〜いので、「あの~、女王様?」と話しかけると
「ちょっと黙ってて!」と一喝してすぐ、
「あ、ごめんなさい、少し待って」と小声で言う。
そして、その場で座りこんでしまった。
あまりよく覚えていないが、僕は思いきって(というか、辛抱しきれず)
「とりあえず、そこのバラ鞭で、僕を打ってみたらどうかな」 (当時はまだ、鞭はNG項目でなかった)
「僕の反応を見ながら、方針を立て直してみては?」 などと、アドバイスしてみた、
↑
というと、聞こえはいいが、早く何かして下さ~い!という傲慢な要求でもあったろう。
僕の意表をついた「反逆」に、彼女は戸惑っているかに見えた。
僕が やめて〜!と叫ぶのか、もっと〜!と懇願するのか、どっちだと思う? と言ってみると、彼女の表情は柔らかくなり、茶目っ気たっぷりの笑顔で鞭を手にした。
そのリアクションに僕の胸はキュンと鳴った。
( ← もしかして死語?)
もう、キュン死である(>_<) 普通ならば、プレイの真っ最中、素に戻ってしまう状況には萎えてしまうものだが、この時はなぜだか、新卒のウブな女王様を「なんとかしてやらねば!」という妙な使命感に萌えていた。
それまでは妄想・仮想現実であったはずのSM空間が、リアルになった瞬間。
当時の僕は、女王様に言って欲しい台詞や、細かい設定を書いた構成台本を持参してたくせに、
(もしかしたらこの緻密な台本が、その新人女王様をビビらせていたのかもしれない) 「アドリブでもよいので、とにかく何かやってみよう!」と励ましたような気がする。
滑稽な茶番劇が、筋書きのない現代演劇に転化した。
僕は無意識に、いや無謀にもその原石を磨こうとしていた。
彼女は僕の期待通りに、たどたどしくも愛らしく、まだ板についていない女王様を演じてくれた。
プレイ的にはイマイチではあったけれども、一応は
きちんと顔面騎乗をしてくれたし ↑ 結局はソレかい (。。)☆\バキ 僕たちは
同じスタートラインに立ち、 よーいドンで始まる関係性 を楽しんだように思う。
年齢も環境も性格も異なる赤の他人同士が、イキナリ同じスタートラインに立つだけでも、本当はかなり難しいことなのだ。そこを互いに了解した上で、同じゴールを目指して二人で共有できる何かを探す作業。
そういうプレイは、ラシオラが初めてだった。
朝霧さんの言う「50対50」にはブレがある。いや、あって当然だろう。
初対面なら「10対90」ぐらいの場合もあり得るだろうし、その逆もまた然り。
己の快楽的満足を得たいがために、マゾ側がリードする場面はこれまでにも時々あった。
そのブレを調整していくために、
相手の意図や思いを読み解く努力への道しるべが、その指標となる数値が「50対50」ということなのかもしれない。
その時は気づかなかったが、後になって思い返すと、どうやら、そういうことらしい。
当時、30代後半だった僕は、あらためて「SMって奥が深いなぁ」と、しみじみ実感した。
何だか僕は、新しいマゾヒズムに、得難いSM観に「覚醒」したような気がした。
それが本物とまでは言わない。
ただ僕も彼女も、思いがけず協力し、お互いに恥ずかしい記憶を共有したのである。
不完全でも、ある意味でコラボを実現したというような驚きと喜びがあったように思う。
その後も、全国のSMクラブを転々としつつ、気に入った女王様がラシオラに入店するたび新たに入会登録し、女王様と奴隷の二人が、同じスタートラインに立つようなセッションを繰り返してきた。
もし新人さんで、少し危なっかしいドミナがお相手になった時には、最初のうちは導くようにして、多くのトライ&エラーを経てからでも、最終的には女王様に導かれるようになっていければいい。
一方通行ではない、双方向性のあるセッションへ、ラシオラは僕を導いてくれた。
そのようにして仲良しになった女王様が、数年前に生前退位されたこともあり、ラシオラへの足は遠のき、現在に至っている。
もうそろそろ、僕もマゾを「生前引退」しようか。
数年前から腰を患い、今年の春には目の手術をして、視力も衰えてしまった。
身体のあちこちに不具合が出てくると、あらゆるモチベーションが下がってくる。
マゾ願望だけは衰えないはず!と思っていたのに、還暦を目前に控えた今、僕は凹んでいる。
しかし、たとえマゾを卒業しても、僕の心は常にラシオラとともにある。
老マゾは死なず ただ消え去るのみ 20周年のご祝儀に「ダイレクト参拝」を久しぶりにしてみようかと思案していた今年、ラシオラのオープン時からの古い会員さんで、リエさん周辺ではおそらく「魂の近親者」と思しき方の訃報が聞こえた。
その人は、直接には存じ上げない老M紳士なのだが、リエさんがブログで発する悲痛な叫び声から、無意識のうちにお悔みの言葉が浮かんでいた。
僕たちはいつか、必ず死ぬ。
いつかはわからないけれど、明日は我が身かもしれずと思うと「SMプレイも潮時だよ」という神様のお告げのようにも聞こえる。
このタイミング、いつものような、周年のお祭り騒ぎはありえないだろうか。
そう思っていた矢先に、
日本橋でのイベント告知が唐突にアナウンスされたのは先月。
朝霧さんも、お辛いところと推察されるが、人生百年時代を視野に、新たな再起動を決心されたのかもしれない。
お亡くなりになられた大先輩に不謹慎と思いながらも、僕はこの周年祭告知に安堵すると同時に、ラシオラでの、小さいけれども宝石のような思い出の輝きが、この老いぼれた身体と魂を支えてくれていたのだという、新たなる「覚醒」を再び手にした。
朝霧さんが、意識レベルの高いドミナを育ててくれていなければ、今のような心境にはなれなかったように思う。

ラシオラとともに・・・ どうでもいいか、そんなコト。 貴重な経験と、楽しい思い出を与えてくれたラシオラ、リエさん
そして、素敵なドミナの皆様に感謝の気持ちを込めて...
20周年おめでとうございます m(_ _)m
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