
元来アウトドア派でもない僕なのですが、巣篭もりが続きインドアで映画見るのも、いいかげん飽きてきたこともあって、マルセル・カルネ監督の有名な仏映画「天井棧敷の人々」を映画館で観てきました。
(現在、東京・
恵比寿ガーデンシネマで上映中)
40年ぐらい昔に、初めて見た時は、ジャン・ルイ・バローのパントマイムが強烈に想い出に残る不思議な作品という印象でしたが、20年前にあらためて見た時には、第二次世界大戦時のナチス占領下で製作されていたという、歴史的背景なども理解しつつ観賞し、感銘を受けたのを憶えています。
(メインスタッフには、ユダヤ系の人々も携わっていた...) 日本では80年代以降から、5年〜10年間隔で時折、大々的にリバイバル上映される定番映画でもありますが、今回は4Kデジタルで修復された美しい画質で(音質も)、ひときわ鮮やかです。
修復されていなくても古さを感じることのない永遠の名作だとは思うのですが、衣裳のテクスチャーとかオープン・セットの臨場感など、1945年公開とは思えない新鮮な美しさには唖然としてしまう。
僕よりひと回り上の世代には絶対的なレジェンド映画で、今さら僕が言うのも恥ずかしいけれど、世界的・国際的にも映画史上に残る不滅の傑作ですので、若い方にはもちろん、全ての未見の方には強くオススメします。
あまりにも有名すぎて、おそらくこの拙ブログの読者であれば、既に見て知っている人がほとんどだと思いますけれど、何度も見ても楽しめるし、新しい発見や感動を味わえる、本当に一粒で二度も三度も美味しい(← もしかして死語?)映画です。
DVDも出てますが、やはりこの作品は、物語の設定が劇場や舞台俳優を主人公にしていることもあり、たとえコロナ禍であっても、いや、だからこそこの機会に映画館で鑑賞するに値するのではないだろうか。
演出や美術が見事なのはもちろんのこと、脚本がシャンソンの「枯葉」の作詞で知られるジャック・プレヴェールで、この映画の台詞はすべてが抒情詩のように素晴らしい。

僕が還暦を迎えたからといって、そうした情緒を理解しているとも思えないんだけど、なんだか良質な文学作品を味わうかのごとく字幕を夢中で追っている自分に、思わず気恥ずかしくなってしまった。
絵画や音楽でも、近年は心の底から感動するという経験から遠ざかっていたので、若かりし日のウブな自分を懐かしく思い出したりして・・・
かつて自分がウブだったことなんて、自分自身にも絶対に秘密にしておきたい忌まわしい記憶だ。
まぁそれはともかくとして、味わい深いセリフやシーンの洪水で堪能した。
例えば、舞台で行われているパントマイムに天井桟敷から観ている客がヤジを飛ばすと、その下にいる別の客が「やかましい!
無言劇が聞こえねーぞ!」と怒鳴り返すシーンに象徴されるように、あちらこちらに散りばめられたさりげなく粋な言い回しが、詩的リアリズムを感じさせてくれます。
休憩を挟んでの二部構成で、第1幕約100分、第2幕約90分の3時間を超える大作ですが、お芝居を観るような気分でのんびりと、まったりとご覧いただきたい。
本当に時間の経つのを忘れるくらい癒される。
こんなご時世のせいか、まさにヒーリング・ムービーとも言えるかのではないだろうか。
普通なら満席となりそうな企画・作品なのに、入りは半分以下でガラすきでした。
三密はないので快適だし、入場時に検温と手指の消毒といった段取りもきちんとあります。
ちなみにチケット購入はネットですが、入場時に「マゾ花で見た」と言えば、料金が2割引のキャッシュバックに、なりませんのでご注意下さい (。。)☆\バキ
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