ロンドン在住のプロ女王様が、
興味深いつぶやきをされているのを見つけました。
音声をオンにして動画をご覧頂きたいのですが、彼女はウエブやSNSを積極的に活用して、プレイ希望者とのアクセスに成功している今風のドミナです。
通常のプロモーションでは、イケイケどんどんで勝気なドミナぶりを演じていますが、ここでは、珍しく本音を正直に吐露されているようで、印象に残りました。
発言内容を意訳してみましたので、以下をお読みになってから、もう一回動画をご覧になってみて下さい。
マゾは「厄介」かって? 何よりも言いたいのは、彼らは実際にはできないことを、ファンタジーとしてのみ受け入れるってことかしら。・・・。ほとんどのマゾには、こだわりの妄想があるんだけど、(ソレが大好きでやってみたいという情熱はあっても)いざ現実にやろうとすると、ビビって逆ギレするの。
前にもあったんだけれど、そのことがいつも頭から離れないワ・・・ 意味的にはだいたいこんな感じでしょう。
なんだかいつもの Twitter の威勢のよさと比べると、彼女は内心、凹んでいる印象です。
freak out という、日本ではあまり馴染みのないスラングが聞き取りにくかったですが、「ビビる」とか、「逆ギレする」、「ぶっとぶ(ハイになる)」など幅広い意味で使われます。
海外ではSMクラブの顧客をたいていスレイブ(Slave = 奴隷)と総称しているようですが、ここではわかりやすく「マゾ」としました。
どうやら彼女、以前マゾ客に逆ギレされたことがあるようです。
これは、SMのセッションにおいては昔からある、古くて新しい問題で、いわゆる「理想と現実」のギャップについての言及です。
例えばマゾの立場から言えば、本当は
NGなんだけど挑戦してみたい項目(一本鞭や黄金など)に対して、女王様の側からは、未知なる快楽として、本来NGの項目でマゾに目覚めてもらえるよう導いてみたい、という調教願望や支配欲とのせめぎ合いの世界であり、時々持ち上がるテーマです。
ある女王様が、「この前、マゾに逆ギレされちゃった、テヘ (>_<)」と落ち込んでいたので慰めたことがあります。
「そういうことも、あるだろサ」と言っただけですけど (。。)☆\バキ
限界ギリギリまでファンタジーを楽しむには、信頼関係と経験、スキル、人柄、タイミングなど、様々なハードルをクリアしておくことが望ましい。
マゾの側からすれば「本当はNG」なんだけど、この女王様とならOKかも?という「前向きの願望」が少なくとも大前提となるでしょう。
しかし実際にやってみて、やっぱりダメだったということはもちろん、ありえる。
春川ナミオさんもかつて、黄金にチャレンジされようとして、女王様のお尻の下で、顔の上にポタっと小さいのを落としてもらったんだけど、結局、口の中には入れられなかった....というエピソードを、ご本人から直接伺ったことがあります。
「アカンかったね。少量ならいけると思ったんやけど」と苦笑しながらおっしゃっていました。春川さんがその時に使われた表現が「若気の至り」でした。
それはともかくとして、僕もセーフワードを叫びまくるという、みっともない経験を、昔はしたことがありましたので、この動画の女王様のつぶやきが、強く胸に刺さりました。
セッションが始まってから、「それは嫌だから止めて下さい!」とは、なかなか言えない。
女王様がそれを言わせないような、ほどほどにコントロールできる器量の持ち主ならばいいけれど、ただサディスティックに楽しみすぎて我を忘れて責め続けてしまう!という恐ろしい(いや、理想的な?)シチュエーションもある。
相性の問題も含めて、個々に正解も不正解もない世界です。
だから「厄介」だと、この女王様は言いたいのかもしれない。
最初この動画を観た時に、厄介なスレイブを批判しているかのようにも感じたのですが、そうでもないらしい。まだ若いけど、スキルと経験はありそう。
彼女の営業用HPを見ると、なかなか見事です。
そこに見え隠れするアバターは、マーケティングのための虚像のヴィジュアルなのでしょう。
先述の動画も含め、日々のことをつぶやいてます。
Madam Emilia | London Dominatrix 本当は優しくて誠実な、言い換えればは野心的で真のファムファタール的なアブナいドミナなのかもしれない。
そういう悪女、じゃなくて、ミステリアスな魔女のようなドミナの手にかかって、ガチで地獄のどん底に落とされ、苦痛の叫び声をあげてみたいという「上級のマゾヒズム」をお持ちの御仁には、魅力的なドミナでしょう。
それを承知で入ってみて、やっぱり泣きを入れるというオプションもあるアル(たぶん)。
まったくもって本当に、なんて「厄介」な世界なのでしょう。
僕が20代の頃、ビギナー時代に入ったあるSMクラブで、女王様の責め方に耐えられず「やめて下さい!」と思わず怒鳴ってしまったことがあります。
Freak out してしまった。
女王様はびっくりされて、すぐにやめてくれましたが、後から思うのです。彼女にはもちろん悪気はなく、一生懸命にロールプレイを演じてくれていた。ちょっとかみ合っていなかっただけのこと。
当時の若かった僕には、現場でそこまでは思い至れなかった。
この件に関しては深く反省しています。
若気の至りというやつ。
しかし、このようなすれ違いは、SMのセッションでは、時折あります。
そのようなツラい悲しみを乗り越えて、マゾとしての成長もあったかと思う。
プロ女王様がドキッとして戸惑うのは、相手を「支配している」という虚構の物語が崩壊する時です。
素に戻ったマゾは舞台から降りてしまう。
プロとしての女王様が落ち込むとすれば、そういう時でしょう。
そのリスクは常にある。
そのことをお互いによく理解し、納得してセッションに臨めれば、怪我は少なくてすむと思います。
上手くいかないこともあるだろうサ、ぐらいな寛容な気持ちでプレイできればよいですね。
■ 理想と現実 2009年 11月 28日付エントリー記事
昔、思わずプチ逆ギレしてしまった悲しい思い出についてカミングアウトしています... (>_<)
その時にあるプロ女王様から、次のようなコメントを頂きました。
関西でSMの女王様をしています
本来Mの方が主役であるはずのSMで
そういったことをされるSの方がいらっしゃることを悲しく思います
Mの人が本当に無理なことはしないということをわかってる
女王様もいらっしゃいますので諦めないで欲しいなぁと思います
きっとトラウマを克服してくれる女王様に出会えますよ
事前に「昔、無理な事をされてトラウマになったので絶対に無理な事はしないで欲しい」と言っておくのもいいかもしれません この時にきちんとした返信ができませんでしたが、ありがとうございました。