
ほとんどお蔵出しみたいな感じですけど、この作品はとても珍しいと思う。
まず、ペニスをここまで露出した表現は、春川さんの作品としては、稀です。
「奴隷は女王様のために、喜んで奉仕するのはいいが、興奮してはいかん」というのが春川さんのお考えで、勃起なんてもってトンデモナイ。
まぁ、勃ってはいかんとまでは言わなくても、そこを強調して描かれることはありませんでした。
右下に「春」の字のサインが見えることから、小説などの挿絵ではなく、オリジナル作品かとも思われます。あるいは、親しい人からの依頼で描かれた、家族の肖像?みたいな位置づけになるのか・・・
他の誰かからモティーフの想を得たにしても、春川さんがご自身のために、内面的なものを描こうとしていたような気が僕にはします。根拠はないし、間違っているのかもしれませんが・・・
春川さんは、アブノーマルな光景や倒錯的な痴態を描きながらも、そこに登場する人物の性格や心情を引き出し、人間の心を描きとめるという、地味な作業をしています。
母性とエロスと倒錯のカオスが入り乱れた、なんとも言えない筆致は、春川さんの真骨頂です。
この種の痴態はどれも、「いったいナニやってんだか」と言われてしまいそうな趣味でもあり、人によっては悪趣味と言われかねない世界ではあるものの、それは言わないお約束。
SMなんてサ、王道とも言える鞭や緊縛にしたって、「いったいナニやってんだか」と、最終的にはノーマルな人に言われてしまいそうです。そこがまたいいんだけど、近年はアブノーマルな世界もかなりグローバル化していて、鞭・緊縛程度じゃもうアブノーマルや倒錯じゃないという見方もあるカモ鴨川です。
春川さんは、それまで見えにくかったアブノーマルな世界を、さらに、マゾヒストの理想とする世界を巧みに可視化し、その普及促進、啓蒙活動に多大な貢献をされてきました。
春川さん亡き今、彼の衣鉢を継ぐ才能が、今後現れることを願っています。
価値観が次々と多様化する現代に生きる僕たちは、どのようなアブノーマル観、マゾヒズム像を、次代に引き継いでいけるのでしょうか・・・
■ 表象としての春川ナミオ美術
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