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マゾヒズムに花束を!

恥ずかしくて、ためになる情報発信 Female Domination & BDSM

沼正三 

神の酒を手にいれる方法


 奇譚クラブに沼正三が初めて登場するのは、昭和28年4月号に掲載された「神の酒を手にいれる方法」と題される、芳野眉美宛の投稿だとされている。(それより以前にも投稿していた可能性は残ります)


「家畜人ヤプー」の連載が始まるのはこの3年後。その翌年に天野哲夫が「マゾヒズムへのいざない」という投稿で初登場。そしてこの翌月に沼正三が「天野哲夫氏の登場を喜ぶ」という一文を寄せた。これら一連の投稿が同一人物の自作自演なのか、独立した2人が存在していたのか、今となっては知る由もない。

 「奇譚クラブ」は、今から思うと

戦後の「2ちゃんねる」

 みたいなものだったのかもしれない。全国から届く匿名の投稿が載る紙の掲示板。編集長は投稿を校閲・整理するのが主な仕事で、ネット掲示板の管理人のようなもの。須磨利之みたいに、一人で何人もの役割を演じている編集長がいたぐらいだから、投稿者の中にもハンドルネームを複数使い分けていたマニアがいたとしても不自然ではない。先月自分が投稿した内容に対して、今月は自ら批判してみせる自作自演が、のんびりと、まったりと行われていたのかも。

 そのように考えると、沼正三の複数説もまんざらでもなさそうな気がしてくる。
 
 沼正三 のもう一つの代表作が「ある夢想家の手帖から」だ。「奇譚クラブ」連載時は「あるマゾヒストの手帖」というタイトルであったが、単行本化されるにあたり題名の配慮がなされたのであろうか。こちらは「ヤプー」ほど奇想天外ではないものの、やはり思想的に多少マゾッ気がないとついていけない部分はある。ヤプーで描かれていたディープでコアな妄想ワールドを、古今東西のテキストを手がかりとして少し軽いタッチでナビしてくれる。ヤプーの初心者向け副読本としてはいい感じだ。

 これを読んでいると、筆者は学者というより、裁判官なのかもしれないと本当に思ってしまう。マゾヒズムに関する考察を、過去の膨大な文献資料をもとに行うそのやり方は、判例を紐解きながら公判を行う裁判官のそれを連想させる。判例を根拠に判決という論文を執筆するがごとく、人類の英知や芸術活動を根拠にマゾヒズムの普遍性や素晴らしさを唱えるのである。







【関連エントリー】


■ 家畜人ヤプー

■ 演劇「沼正三/家畜人ヤプー」

■ 寺山修司と三島由紀夫





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[ 2008/12/29 13:05 ] 人物 | トラックバック(-) | CM(1)
先ほどお便りしたらいぞうです。
沼さんのことも同時に書けばよかったのですが、不手際があって2回に跨ってしまいました。申し訳ございません。
沼正三が自身が奇譚クラブに登場後、「天野哲夫氏の登場を喜ぶ」という一文を寄せたのは、もし沼さん=天野さんであれば馬仙人さんもおっしゃられていますがやはり不自然ですね。濡木さんのように多数のペンネームを使って小説(M系でもないのに、真木不二夫のペンネームで『黄色オラミ誕生』を書かれたり)を書く必要に迫られていたのであればいざ知らず、沼さんにはヤプーと手帖以外で書きたいことがあったようには見受けられませんでした。
話は変わりますが、homerさんの沼さんの正体に対する推測「筆者は学者というより、裁判官なのかもしれないと本当に思ってしまう。マゾヒズムに関する考察を、過去の膨大な文献資料をもとに行うそのやり方は、判例を紐解きながら公判を行う裁判官のそれを連想させる。判例を根拠に判決という論文を執筆するがごとく、人類の英知や芸術活動を根拠にマゾヒズムの普遍性や素晴らしさを唱えるのである。」は、大いに賛同出来ます。
特に”判例を紐解きながら公判を行う裁判官のそれを連想させる”の
くだりは目から鱗が落ちた思いでした。私も裁判官の故kさんが沼さん(ヤプーの前半部分と手帖の全て)だと思っているので、判例=マゾヒストが目を通すべき文献や日常の些細な出来事≪人類の英知や芸術活動≫と考え合わせてみるとぴったりと重なり合ってきます。
ゴミムシさんも沼さんとkさんの随筆(書評集)と取り上げていますが、判例云々の指摘はなかったように思います。homerさんの独自の鋭い見識です。
またまた場違いな話をしてしまいましたが、興味のある項目でいずれまた何か書かせていただくかもしれません。その際は宜しくお願い致します。



[ 2012/10/18 13:44 ] [ 編集 ]
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