
「ギターのレッスン」というタイトルのこの絵から、どことなく不穏な胸騒ぎを覚えるのはなぜだろう。
バルテュスの絵には多くの場合「挑発的でエロティック」という形容詞がついてまわる。
一瞬、
ドキリとさせられる。
あからさまな「エロ」ではなく、あいまいなエロス。
いったい何が行われて、ナニが行われようとしているのか?
刺激的と言うべきか、背徳的とでもいうのか、普通の美術展ではどのようなキャプションで説明をつけたらよいのか学芸員も悩むであろう。
澁澤龍彦によれば、この画家のインスピレーションの根底にある一貫したテーマは、
「幼年期から青春期にいたる過渡期に特有な性的オブセッション」なのだという。
サディズムを思わせる、抑圧されたリビドーの苦悶の表現
---「幻想の画廊から」(河出書房) 誰がどうみてもこの絵は、あまりにも下手くそな生徒に「お仕置き」をしているところを描いたのかもしれない、というような推測は可能だ。
そしてこのお仕置きされている娘には、確実に恍惚の表情をうかべているような、少女には十年早いエクスタシーを感じている様子が垣間見える。片方だけ意味ありげに露出している先生の胸も意味深。
この空間では明らかに、何かが抑圧され、そしてギターの弦のように弾けている。
若い頃、ニューヨークの美術館で初めて見たバルテュスの作品「目を覚ましたテレーズ」

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