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マゾヒズムに花束を!

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家畜人ヤプー 

家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)家畜人ヤプー〈第1巻〉
(幻冬舎アウトロー文庫)

(1999/07)
沼 正三


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 これ面白いから読んでごらんよ、と気楽にはお薦めできない本がある。
 
 そして、よくわかっていない人に読まれても困る。

 「家畜人ヤプー」はそのような作品だ。

 知り合いの女性が「M男性の心理を理解できるかもしれない」と今読んでいるとのことで、そういう動機はたいへん結構なことだと思う。

 この作品を読むためには、マゾヒズムへの好意的な態度がその作品解釈の前提とはなるのかもしれないが、何でもそうだけれど余計な先入観なしに読むのがいいと思う。特殊な内容と言ってしまえば、全ての作品が独自の内容を持っているのであり、ある一つのオリジナリティとしてのヤプーの特殊性をことさら意識することなく、まっさらな状態で読まれるべきであろう。

 と言いつつもやはり、同じようなマゾヒズムをテーマとする「毛皮を着たヴィーナス」「痴人の愛」のような作品とは異なり、かなりマニアックな内容ではあるので、あまり一般受けするとも思えない。近年、漫画化や舞台化もされたし、映画化も企画されていたことがあったが(その後どうなっている?)話題性のみがいつも先行する。

 昨年、作者とされる人物が亡くなった時に、そのスキャンダラスな経緯が紹介されても、内容的な面にまで触れられることはなかった。

 作品としての価値や素晴らしさが世の中にきちんと理解されているとは(僕には)思えない。俗に変態マゾ小説とも言われるように、マゾヒストによる、マゾヒストのために書かれたものであることだけが強調される。それはそのとおりではあるかもしれないにせよ。

 書かれた時代の社会的状況やその後の経緯も含めてすでに古典的・伝説的な作品であり、その背景知識なしに評価するのが難しいのも事実だ。

*これらの経緯については、女性上位時代馬仙人さんのルポルタージュが参考になります。

 だからこそ、新しい時代の若い世代の読者には、素直な気持ちで読んで頂きたいと願う。

 僕が「奇譚クラブ」で初めて読んだ時、これは凄い作品だと確信はしたけれど、絶対に単行本化されないと思った。この雑誌に掲載されていた作品はどれもそうだったのだが、全てが貴重な文献資料として輝いていた。だからこそ、古びて薄汚れた古本であるにもかかわらず、捨てられずに宝物として保管していた。

 「ヤプー」は、禁断の書であり、お宝であった。

 今は文庫で読めるほどポピュラーになっているのが感無量。

 国宝級の作品と言ってもいいぐらいだが、現代でもやはり異端の文学としての位置づけにはある。それなりの受け入れ態勢を整えてから読まれるべきなのかもしれない。初心者はとりあえずてはじめに、もしまだお読みになられていないならば「痴人の愛」とか「毛皮を着たヴィーナス」あたりを読んでみて、精神的なウオームアップをしておいた方がよろしいかもしれない。

 色メガネをはずして、心の目で読んでほしい作品である。


【関連エントリー】

■ 演劇「沼正三/家畜人ヤプー」


■ 沼正三 神の酒を手にいれる方法(奇譚クラブ)


【参考サイト】

「家畜人ヤプー」への誘い(筑波文学の会)

 天野哲夫、沼正三、「家畜人ヤプー」、そして、三島由紀夫

『家畜人ヤプー』映画化について




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[ 2009/11/04 23:56 ] マゾの本棚 | トラックバック(-) | CM(6)
日本の古代にさかのぼったり、天狗の鼻も生体改造の結果とか?色々と改造されるヤップー達。白人と黄色人種の日本人を思わすヤップーは嫌いと言われる人達は人種差別をSMに用いるのは不快と言われます。当時は白人がそれほど崇める立場だったのでしょうか?時代背景も考えますが、アメリカの現在のSMは東洋人に鼻輪を付けられてのプレイとか、黒人の奴隷となる白人男性と多種多様なようですが?日本でもチャイナドレスの奴隷や韓国女性の奴隷希望とか民族差別はないのですが?
[ 2009/11/04 23:06 ] [ 編集 ]
初めてコメントさせて頂きます。

こちらのブログがスタートした頃から訪問させて頂いていて
北川プロでのイベントやその後のこの世界でのご活躍を眩く拝見させてもらっています。

私はめでたく?50代を迎えましたが、
「家畜人ヤプー」は大学時代に読みました。
何故この本を手に取ったのか・・・当時の衝動は思い出せません。
その頃はまだ上下2巻の未完の作品でした。
物語の導入部の思いも寄らぬ展開と
その後の濃密な描写で描かれる時の流れに圧倒されました。
数年前に完結した内容の文庫を読みました。
学生時代にはSだと思っていた自分が今はMだと自覚して
ヤプーの世界に影響を受け憧れる自分を感じています。
20代の頃には理解できないと思いながら
挽き込まれていた自分を今は理解できます。

「家畜人ヤプー」「春琴抄」「痴人の愛」は
MとしてS女性、S男性に仕えるようになって読み返して
改めて自分自身を省みることになった作品でした。

このエントリーを読んでもう一度読み返そうかと思いました。
[ 2009/11/04 23:53 ] [ 編集 ]

 馬仙人さんもおっしゃってましたが、これは「読者を選ぶ」作品だと思います。読んだ人はもう「選ばれている」。評価する人も、批判する人も、この作品に出会ってしまったという「運命」を、受け入れるべきでしょうね。
 この種のファンタジーに嫌悪感を抱く人たちにも、色目がねははずして読んでもらいたいと願います。
[ 2009/11/05 20:52 ] [ 編集 ]

 ゲイM T さん、丁寧なコメントありがとうございます。
  
 最近ブログランキングで初めてお見かけして、そちらブログの方もちょっとだけ拝見しておりました。

 M転、しかもゲイ転(?)ですか? 貴重な経歴というか、珍しいように思いました。ちょっと僕とは嗜好が異なる世界ですが、刺激的な内容ですね。定期購読させて頂きたく思います。

 僕のブログを初期からお読み頂いているそうで、光栄なことだと思っております。マゾヒズムの発展のため、今後ともよろしくお願いします。
[ 2009/11/05 21:04 ] [ 編集 ]
私は文庫本になってから読みました。
かなり興奮し、一気に読んだものです^^

好き嫌いが別れる作品だと思いますが、
私はこの作品の中の「世界」の話として一度目は一気読み、
二度目はクララの変貌に共感^^しながら読みました。
古代史も大好きな分野だし。

私もこの作品はファンタジーだと思っています。
[ 2009/11/07 01:47 ] [ 編集 ]
ありすさんお久しぶりですね。やはり読まれていましたか ^^
ファンタジーとして楽しまれるのはおおらかでいいと思います。
S的視線でもM的視線でも、イマジネーションの幅を広げてくれるし、そういうところがSF小説として評価されている部分でもあるのでしょう。
 僕もSクララの成長記録的な面が好きなところであります。

[ 2009/11/07 09:52 ] [ 編集 ]
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