
この歳になってくると、昔のSM雑誌に郷愁感を抱きつつページをめくることが多くなりました。「あ~コレ好きだったんだよな~」などと胸をときめかしていた作品のいくつかをご紹介しましょう。
まずは鬼頭暁。この人の画風には日本に古くからある「責め絵」や「縛り絵」の伝統が忠実に再現されており、
小妻要ほどではありませんが、伊藤晴雨の流れに繋がるものがあるような気がします。もっぱらS男性を対象にした小説の挿し絵などでお目にかかっていました。
しかしそれは男性マゾヒズムを主題とする作品が少なかったからで、鬼頭暁には Fem-dom系のテイストに独特の魅力を感じます。M男性というより、普通の男が強制的にM的状況に追い込まれるという設定が多く、必然的に男が縛られる図になってしまうのですが、安易に「緊縛イラスト」というネーミングで呼ぶのがはためらわれるような格調の高さを感じます。

カラーの口絵などで見られる色彩感覚が印象的で、女性の肌やストッキングなどの質感も木目が細かく、その繊細な描画には独特のエロティシズムが放出されています。

また、こっけいなほど哀れなマゾ男の姿も描かれ、作者にもおそらくあったであろう被虐趣味が共感を呼びます。
1973年(昭和48年)のSMキング12月号に、鬼頭暁のインタビュー記事が、この種のもとしては珍しく顔写真入りで掲載されています。奥さんの姿もちょっとだけ見ることが出来ますが、恐妻家であることを告白されていました。

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