
昭和21年創刊の『奇譚クラブ』誌は、当初実話雑誌として始まったが、昭和二十七年よりSMに的を絞り、多くの読者の賛同を得た。ところが、昭和三十年猥褻図書として発禁処分を受ける。昭和三十一年四月号(復刊三号)より伏せ字の制約が解除される。戦前はSMというだけで「変態」の汚名をうけた異端の世界は、ここに新たな形で花開いた。本書は、その多彩な世界をフィクション、告白、論文にて纏めた。(高倉一著「秘密の本棚」・徳間文庫より抜粋)
SM雑誌というよりは、よりグローバルな変態性欲雑誌という位置づけだったと言えるが、SMというキーワードの大衆化に貢献したメディアであることは間違いない。
古くは
伊藤晴雨 を筆頭に、
沼正三、
春川ナミオ、
団鬼六 など、この雑誌の同人から数々の偉大な作家が生まれた。
その中心人物は喜多玲子というペンネームでも知られる雑誌編集者・
須磨利之 である。
沼正三 ~神の酒を手にいれる方法~(「奇譚クラブ」昭和28年4月号)
須磨利之は、本格的な日本画家でもあった伊藤晴雨の画風を取り入れて責め絵を描き、言ってみれば晴雨の弟子筋にもあたる人物である。晴雨は喜多玲子が須磨利之であるということを知らずに、熱烈なファンレターを送っていたというエピソードも伝えられている。
責め絵というスタイルは、日本独自の形で男性マゾヒズムにも影響を与え、春川ナミオのような、男性が虐められる「責め絵」のスタイルが後に登場することになるのである。
春川ナミオを虐める会「奇譚クラブ」1968年6月号より

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