この本に「A感覚の抽象化」という小論のような興味深いエッセイが収録されています。
接吻は、両円筒ドッキングの欲求から生まれる。

円筒とはOからAへ続いているものを指す。
従って理論的には、そこには、
OとO、OとA、AとA、この三種の接吻がなければならない。
しかしフロイトに依ると、
OとAが互いに自らを性器として取り扱われる
ことを要求している点では、別に優劣はない。
故にO接吻は当然としてA接吻を意味し、各様の口紅は、そのままA部におけるオークル、レッド、ピンクのアクセントを予想するものである。桜桃口は楊柳腰につながり、出口は入り口と結びついて、恰もクラインの壷の表裏のようにいずれが正とも決めがたい。
排泄は「マイナスの摂取」であるから、財布に一文も無いことを「空っケツ」とも云う。稲垣足穂「少年愛の美学」 p.139「A感覚の抽象化」
Oとは口(オーラル)、Aとは言うまでもなく肛門(アヌス)のことで、この両者をを結ぶ「粘膜質円筒」に大宇宙へとつながる虚空をみた足穂。
彼はおそらく、
顔面騎乗の宇宙を最初にみた文学者 だったのかもしれません。
稲垣足穂については、
三島由紀夫と澁澤龍彦が面白い対話 をしていました。
人がなぜ顔面騎乗を本能的に好むのか、そしてセックスよりも意味ある行為としてのアナル奉仕が人類の未来に何をもたらすのか。
社会のありようとも絡む重たい問いとして胸に残ります。
*写真はイメージです 現在、東京の荻窪にあるカフェ・ギャラリーで
6次元の稲垣足穂 古多仁昴志タルホグラフィー展が開催中。
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立ち寄ってみました。
浪人時代
予備校の国語講師が
足穂を語っていたのを
懐かしく思い出します。
当時、うぶな私は
A感覚など当然
理解できず…
あれから
少し大人になりました。