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レヴィ・ストロース逝く 

はるかなる顔面騎乗


はるかなる顔面騎乗
(2006/02)
クロード レヴィ=ストロース








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「これ面白いから読んでごらんよ」と気楽には お薦めしてほしくない 本がある。

 そして、よくわかっている人から感想を聞かれても困る。

 先月末に亡くなられた レヴィ・ストロース の著書はそういうタイプだった。学生時代に読んでもよくわからなかった。

 大学で文学や演劇みたいな、つぶしの利かない学問を専攻していると、この種の難解な本を読まねばならない。

 難解なものは何回読んでもわからない  (。。)☆\バキ

 もっと厳密に言うと、単位を履修するためには「購入」しなければならなかった。

 読んで理解できるかどうかは二の次で、まずその本を持参して、教室というよりは広い講堂みたいなところへ週に一度足を運び、出席カードに学籍番号と名前を書いて90分を過ごす。そうして学期末にその本から手作業でコピー&ペーストしてやれば、単位はなんとかもらえるという仕組み。けしてお安くはない学費を(親が)払っているのに、何やってんだか、と自己嫌悪に陥るフリをしていた。怠けていたわけではない。勉強が嫌いだったわけでもない。学問とはいったい何だろう? 

 わけがわからんなりに、わかったような顔をして「はるかなる視線」から講義を眺めながら(もはや「聴いて」などいなかった)、妄想世界にふけっていた80年代は、知に憧れる痴人の青春時代だったのだろう。今となっては、あれもまんざら無意味なシステムではなかったのだと思いたい。

 そういう高価だが単位の取得目的でしか自分にとっては意味のない本に、レヴィ・ストロースやフーコー、バルトや浅田彰のものがあった。

 大学時代は頭でっかちになりがちだ。進学しなければおそらく手にもとらなかった本を買ったぐらいで、いい気になっていた。しかし、その贅沢なモラトリアムな時間を使って、失恋や留年などの挫折を経験したことは、今思えば貴重な意味があったようにも思う。当時は大きな痛手だったが。

 大学を卒業して10年ぐらいしてから、何を血迷ったかフランス語をもう一度勉強しなおそうと思い立ち、アテネフランセに通いながら気合いを入れて「星の王子さま」を原書で読んでいた。(気合いを入れてその程度なのでたかがしれているが)

 その時に知り合った女性がレヴィ・ストロースを原書でさらっと読んでいて打ちのめされたことがある。

 頭のいい女には適わない。もう服従するしかないヨ。そう思ってデートに誘ったが、案の定断られた。別につき合っていたわけではないから、ふられた、とは思わなかったが、ふられた以上の精神的ダメージを受けた。(←それを「ふられた」という)

 学生時代にきちんと読んでいれば、少しはハッタリかまして彼女と構造主義について語ることができたであろう。そうすれば食事ぐらいには一度行けたかもしれない。そういう悔しさから、レヴィ・ストロースを読み返してみたことがある。

 全体的にはやっぱりよくわからなかったけど、ある対象を理解するためには、それを構成する要素とその関係性を理解せねばならない・・・というようなことが難しく書かれているだけじゃん、という程度の理解は出来た。

 簡単に言えばこういうことになる。

 例えば、顔面騎乗について理解しようとする場合、その構成要素とは何か?

1:圧迫感
2:安心感
3:緊張感

 の3つが考えられるであろう。

 顔の上に女性の大きなお尻がのっかるわけで、そこには体重が押しかかる。まず顔面騎乗にはこの圧力が必要条件となる。

 しかし、体重をかけすぎたり、逆に遠慮して腰を浮かしたりするのもよくない。

死なない程度のほどよいバランス感覚

 が求められるので、安心感も必要であろう。
 
 このバランス感覚とも関連して、とにかく鼻と口を完全にふさがれて呼吸のできない危険な状況がしばらく続く。顔面騎乗を行う場合の常識としての力加減やお互いの信頼関係は欠かせない。そこにある種の緊張感が生まれ、もしかしたら死ぬかもしれないというスリルも重要な要素となっている。
  
 このように考えてみると、顔面騎乗の本質が見えてくる。

 たんなるヘンタイの倒錯的な願望ではなく(8割がたその通りかもしれないが)苦しむことが快楽であり、苦しめることが快楽を与えるというマゾヒズムとサディズムの両義性と類似性をも構成する要件にもなっている。

 特にマゾヒズム願望を満たす手段としての顔面騎乗においては、圧迫されながら崇拝する女王様から裏切られるかもしれないという真暗な陥穽と、調教されて天国への階段に導かれるような恍惚との間で宙づり状態になるのが理想とされている。

 さらに「責め」なのか「ご褒美」かという二元論、機能としての体位とその意味など、顔面騎乗に関する様々で複雑な問題は、レヴィ・ストロースによって解決された(ような)ものであり、

現代思想としての顔面騎乗

の評価を明確に意識させくれたのは、彼の功績であった。

 これは春川ナミオに次いで偉大なものだと言える。

 顔面騎乗というサブカルチャーに、言語学、精神分析学、生物学、文化人類学などの分野での構造主義を応用し、記号論的な意味を与えた偉大な思想家、レヴィ・ストロース氏のご冥福を心よりお祈り致します。

訃報:レビストロースさん死去



はるかなる視線〈2〉はるかなる視線〈2〉
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遥かなる上位入賞のために








【関連エントリー】

■ 顔面騎乗の起源と歴史

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[ 2009/11/10 14:18 ] 顔面騎乗探求 | トラックバック(-) | CM(4)
はじめまして。
いつも拝読させていただいております。

「現代思想としての~」
というフレーズに思わずほころんでしまいました。

レヴィ・ストロース
残念です。
[ 2009/11/10 12:33 ] [ 編集 ]
 コメントありがとうございます。

 ほころぶ・・・とは受けたということでしょうか? おそらく苦笑でしょう(^^)
   
 実はここはシャレのようでいて、意外とマジな部分です。
でも、ほころんで頂ければうれしいです。

 櫻主さんの素敵な書評を拝見させて頂きましたが、僕の愛読書も紹介されていました。僕がブログで紹介してないだけで読んだことのある作品もたくさんありました。

 まともすぎてとてもきれいなブログですので僕からはノーコメントですが、読み方に共感するものが多いです。秘かに定期購読させて下さい。

[ 2009/11/10 13:00 ] [ 編集 ]
はい、受けました。(笑)

あの頃、
タイトルに「現代思想としての~」
とつけた本が山ほど出たなぁ…と。

思えば、SMの裾野が拡がっていったのも
構造主義の流行と機を一にしているのかもしれません。
偉大です。レヴィ・ストロース。

お褒めの言葉、ありがとうございます。
表向きまともすぎるきらいがありますが
是非、秘かなお越しをお待ちしております。

私もまた
秘かに購読を続けさせていただきます。



[ 2009/11/10 14:36 ] [ 編集 ]

> 思えば、SMの裾野が拡がっていったのも
> 構造主義の流行と機を一にしているのかもしれません。

 まったく同感です。読んでる本が似通っていると、考えていることも似てそうですね。

 あの頃は、高度経済成長が落ち着いて、一億総中流の世の中に入り、
「低度知識成長」とも言える時代だったような気がします。

 幸か不幸か僕みたいに頭のわるい人間でも、レヴィ・ストロースのように偉大な
知識人の思想に触れることが可能になった。

 いやらしい言い方をあえてすると、無学な庶民レベルでも、貴族階級の趣味を味わえる。
 
 いわば「知の大衆化」が、貴族社会のお遊び的なSMをも一般大衆に広めたのだと。

 SMが知的で高度だとまでは言いませんが、ある程度生活や心にゆとりがなければ、
お金払ってまで鞭打たれに行こうなんて発想はできないでしょう。

 まあ、奥さんにやってもらっている人もいますけれども、それだってある意味では
特権階級みたいなものだと思います。


> 私もまた
> 秘かに購読を続けさせていただきます。

 いや~、なんというのか、櫻主さんみたいに、まともなブログやってる人が読むような内容じゃないような気がしますが・・・(シャレじゃなくて)

 僕も今度、詩を書くように書評を書いてみたいものです。庶民じゃ無理かな^^
[ 2009/11/11 01:51 ] [ 編集 ]
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 自分に素直になりたい!そう願っているひねくれ者なのかもしれません。平凡で小市民的な暮らしを営む一方で、過激な妄想世界を漂う、無意識過剰の仮性マゾ。



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