
SMを趣味に持つ人に関する報道は、どうしても偏ってしまうのか。個人の趣味として敬意が払われるべきものではないとでもいうのだろうか。軽蔑されたりするのはともかく、個人のプライバシーや人権が社会的に侵害されていいはずがない。
国際自動車連盟(FIA)のマックス・モズリー会長(67歳)が、5人の売春婦を女王様にしたSMプレイをしていたことが報道され、しかも盗撮された映像がネットで公開されてしまった。F1レースや自動車業界では、日本も含めて世界的にリスペクトされてきた大人物のスキャンダルとして、今年の春
騒ぎになっていた。
全裸で首輪をつけられたモズリー会長がブロンド女性から鞭で打たれるの図。英国では伝統的によく見られる性的倒錯というだけではなく、ナチスドイツが強制収容所で行った拷問をイメージするようなシナリオだったということもあってか、人種差別問題としても取りざたされ、FIA会長職の辞任が議論されるまでの騒ぎとなった。モズリー氏はすっぱ抜いたタブロイド紙を告発し、訴えられた News of World側は、(モズリー氏の趣味は)公的人物として相応しくない行為として受けてたつ姿勢。巧みに政治的に利用された印象である。
「戦争で捕虜になった男が、女性に監禁され拷問を受ける」なんていうのは、SM的にはごくありきたりのストーリー。むしろ変態性がなくて面白くないレベルだと思うのだが、モズリー氏の父親が、英国のファシスト的リーダーで反ユダヤ思想家だったことが問題をややこしくしている。そんな家庭の事情ゆえの倒錯的願望だったかもしれないことを思うと不幸な偶然だ。さらに、その事実ゆえの陰謀という線も十分考えられる。モズリー会長が好んだSMのシナリオが、「女教師と生徒」ものとか、あるいは「看護婦に浣腸されるM男」といったセッション・イメージであったとしても、同様にオモシロおかしく、侮蔑の眼差しを込めて暴露されていたのであろう。

いや、間違いなくモズリー氏はハメられたのだ。
英情報機関MI5の陰謀説も出ているぐらいだ。
盗撮された映像を見れば、それがいかに周到に準備されたものかがわかる。つけられたテロップ原稿も、意図的なメッセージを伝えているのは明らかだ。大金を渡され、買収されてしまった女王様たち。英国の現行法では売春を斡旋する側に違法性があり、客であるモズリー氏は法を犯しているわけではない。タブロイド紙は情報提供元である犯罪者の身元を保護し、無実の人物をさらしものにしているのである。
モズリー氏が家族を裏切ったこと。モータースポーツ界に不名誉な損害をもたらしたこと。そして、タブロイド紙のねつ造を信じるとするなら、彼がナチス的空想にふけったこと。これら全てが彼の全人格を貶め、FIA会長職を辞任すべき理由となるのだろうか。
後日、モズリー氏がこの問題に関する
インタビューで次のように述べているのが心に残った。
「セックスの問題は、生殖過程としての正常位から、わたしの行為をはるかに超えた最も奇妙で異常なものまで含まれる。
誰も傷つけず、同意に基づき、成人同士が秘かにする、という条件であれば、ほとんどの大人は、他人の性行為の範囲に関しては当事者間の問題だと言うだろう。だからこれが道徳的問題だとは思わない」 もうこうなってしまったら、開きなおるしかないのだろう。究極の羞恥プレイの官能に、精神がマヒしてもおかしくない。マゾでなかったら自殺していたかもしれない。
全世界に
全裸で首輪をつけられ鞭打たれている姿が 公開されたマゾヒストの発言だけに、重い。いや軽いのか?
今月の5日、パリで開催されたFIA臨時総会の信任投票でモズリー氏は信任され、会長職に留まることが決定した。
「人々がそういった一面を持つことを理解しなくてはならない。
繰り返すが、成人で同意があり、秘かにする限り、誰も傷つけない
というのがわたしの意見だ」 (マックス・モズリー FIA会長) F1の大物 エッチな地下牢へ

安っぽいアダルトビデオよりは凝った、モーションテロップで状況が解説されていく内容。ナマ撮りでなく、編集されてかなり念入りに造り込まれているのがわかる。

モズリー氏は年に3~4回、同じ売春宿に通いつめ、SMプレイに興じていた。彼と特定できる映像を、待ち伏せして撮影している。

アパートの地下室に入ると、ナチス看守のような服を着た女性から、これから罰を受けることになると言われ、他の収容所でどんな罰を受けたかを確認するために全裸になるよう命じられる。

さんざん鞭打たれて辱めを受けた後、今度は囚人服を着た別の女性を鞭打つこ立場に逆転するモズリー氏。なんてことはない、「S&Mの5人女王様コース」ではないか。これで日本円にして約50万円という値段は、人数と内容を考慮すれば相場と言えるかもしれない。
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