
数年前、ラ・シオラや大阪のSMクラブが摘発された時の容疑の一つは、出店が違法とされる場所での風俗営業が原因だった。しかし、おおっぴらに告知していたわけではなく、ひっそりと10年以上もそれでやってきたのだから、
大目にみろ とは言わないにしても、
まずは行政指導とか警告を先にしてもよかったのではないだろうか。
風俗営業の届け出の義務を怠ったからといって、即逮捕とか摘発という動きにはならないと思う。まずは当局が業界の実態を把握するのが目的の法律なのであり、取り締まりはその後の話だろう。
以前は、ダンス教室なども風営法の規制対象だったが、映画「Shall we ダンス?」のヒットのおかげで社交ダンスの流行とともに規制除外となったケースもある。
この種の法律の適用や解釈には、しばしば恣意的な印象を受ける。
1985年に、戦後初めて大規模な改正風営法が施行され、パチンコ業界などが大打撃を受けた。この当時のSMは、同好会や秘密サークル系のノリで、それこそ実態把握など不可能な状況から、商業的なSMクラブへと発展しつつある時代でもあった。
伝えられる有名な話では、当時における六本木の老舗SMクラブ「サムの城」が、この影響で閉店に追い込まれたらしい。
パチンコ店も何故か「風俗」営業でこの規制の対象となるが、ソープやその他の風俗営業と比べると、
SM関係の店は目の敵にされている ような気がするのは気のせいだろうか・・・
戦前から戦後にかけての風俗営業は、地図に赤線で囲まれた地域だけに許可されていた。
トルコ風呂(ソープランド以前の名称)や遊廓のある地域が一時期「赤線」と呼ばれていたのはこのためである。
遊廓や赤線ではいったい何が行われていたのか? もちろん性行為だ。
ただし、ノーマルなセックスだけとは限らない。
娼婦におしっこをかけてもらったり(あるいは飲んだり)、顔面騎乗やお馬さんごっこなど、性行為とは言えない意味不明なプレイもそこで行われていた。
当時のお役人があまり気にしなかっただけで、ありとあらゆる変態行為が国家公認のもとでなされていた。
そのスタイルは当事者同士だけの秘密の世界。
口コミで「変なお客さん」の噂は流れても、規制対象となるほどではなかった。
夫婦間ではとてもできない変態行為をするための場所として赤線地帯は利用されており、今で言うSMプレイもその一つであった。
当人同士の合意の上とはいえ、傷害事件として発覚したこともあり、異常性愛行為は犯罪として見なされていた時代。
ほぼ同じ頃「奇譚クラブ」や「風俗草子」が有害図書として規制され、発禁処分になっている。
この時に事情聴取を受けた編集者が刑事に
「変態はな、それだけで犯罪なんだよ!」 と糾弾された。
まず「ストーリーありき」の
えん罪の構図がここにも見られる。
21世紀の今、アブノーマルな趣味が犯罪視されているとは考えたくないが、古い時代の偏見や差別の悪影響が、少なからず残っているのかもしれない。
一般の人たちが、個人的にSMというものへの誤解を抱くのはいたしかたないにしても、当局やマスコミが異質なものへの理性的な態度を失うようなことは、許されることではない。
そのような事態をなんとしても回避していく意識や努力が、店側やお客さん、そして我々変態には求められているのではないだろうか。

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六本木ジェイルの事件は悪ノリした客も自業自得とはいえ、逮捕された女性客はむしろ被害者だと思います。
店側がもっと配慮すべきだし、店内は公共の場であり、公序良俗に反した行いを助長すべきではありませんでした。ヘンタイにも最低限の常識が必要だと思います。