Eve女王様 イブさんは、六本木
シュガーヒール に在籍し、北川ビデオでは飛室璃杏という名前で作品No.146から登場する看板女優的存在である。緊縛&鞭ともにいけてるハイレベルなスキルと、ソフトでエロティックな責めでも定評のカリスマ女王様だ。シュガーヒールは老舗のSMショーパブとして知られ、作家の村上龍も出入りしている正当派SMラウンジ。M女もいて、ショーはどちらかというとS男さん向けなのかもしれない。
ちなみにイブさんはバイセクシャルで、M女も責める。そういえばそのフェミニンな魅力の陰には、きっぷのいい男まさりなところが見え隠れし、話していると妙な気分になったものだった。本番直前に舞台袖で一緒にスタンバイしている時、超ナーバスになっていた僕を、「おまえな~、ここまできてビビってどうすんのよ、しゃきっとしろい!」と、まるで「俺は男だ!」の森田健作みたく激入れてくれたのが印象に残っている。あれのおかげでけっこう度胸がすわった。彼女の専属奴隷さんもとてもナイスガイで、「主従関係」というよりは、「体育会系の先輩後輩」という感じであった。(さわやかな意味で)
今回、何人かの女王様やリアル奴隷さん達と直に接してみて思ったのは、皆さんまず普通の人として素晴らしい人たちであったこと。楽屋や打ち上げの席で、奴隷さんが何かとお世話しているところも目撃したが、「奉仕している」とか、「こき使われている」という様子では全くなくて、ごくごく自然な関係にみえる。もちろん見えないところでは、おそらく「
あんなコト」や、「
こんなコト」も行われているのは容易に想像できるのだが、女王様と奴隷の関係というのは、第三者には入り込めないプライベートなもので、その聖域性は同じ北川プロのコミュニティ内においてもきちんと尊重されている。ちょっと特殊な関係かもしれないが、「世界は二人のために」といった感じの独特のムードは、ノーマルなカップルにだってあるだろう。ノーマルとかアブノーマルとかいう言葉をもう使いたくないのだが、一般的な目から見て、北川プロの世界はきわめてノーマルで拍子抜けしたぐらいだ。
そして女王様は一人残らずチャーミングで美しい。当然のことながら女性としての魅力にあふれている。言葉使いも丁寧で気配りも完璧。僕がMであることを見透かしたような態度もなく、来賓として丁寧にもてなしてくれる。こちらがゲストであるという立場上のことを差し引いても、付け焼き刃の仕草や言動ではないのは明らかだ。この人たちになら、身も心も捧げることができるような気がした。心の底から崇拝し、そして調教されてみたい。本気でそう思った。
もし僕が望めば、それは実現していたのかもしれない。実際にラッシャーさんは3次会の席でリアル調教されていた。「ちょっと私の聖水飲んでみる?」とある女王様と一緒にトイレに行った時に、僕が面食らって目をきょとんとしていると、北川さんが「ちょっと様子見て来たら?」と言うので、まるで子どものような好奇心のかたまりとなってついていった。入り口のところで専属奴隷さんが見張り番のように立つ。「しょうがないですね、ヤレヤレ」といった表情で微笑むだけ。僕は奥に行って「使用中」の個室の前で聞き耳をたてた。紳士用トイレにありえないむせるような香水の匂い。狭い密室では明らかに「何か」が行なわれている。
「あふっ」 とか
「ウフ」 とか。
僕はそれを見たとは云わないが、男の口に女性のあたたかい聖水がほとばしり、滴りを残して納まるさまを、眼前に見るようにありありと感じたのである。
背筋をこわばらせながら、足早に皆のいる酒席へと戻った。
しばらくして、二人とも戻ってきた。ラッシャーさん、なんだかとてもしあわせそう。
「ダメかと思っていたんだけど、飲めちゃった」
この人も「困っちゃうよな~」と言いいながら、その至福の表情が忘れられない。女王様の方もいやがるのを無理強いしたという風ではなく、とてもナチュラルに何事もなかったかの様子である。
他の誰かの常識とはかけ離れているのかもしれない。しかしその誰かに迷惑をかけているわけではなく、お互いに好きなことを諒解と合意の上でやっている。ただそれだけのことだ。
SMの王道というより、人生の王道という感じがする。これが人間らしい本来の生き方ではないのか?
女王様と奴隷の世界。リアル・ライフであろうと、一瞬のゲームであろうとも、そこには利己的なセックスを超絶した、愛ある支配と服従のドラマがある。現実にこういう世界があるのだということを、もろに肌で感じた。
素晴らしい世界だと思った。
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