Sardax の芸術性は、同じ英国の
Beardsley の世紀末美術を彷彿とさせてくれる。
ヨーロッパの古典的な基礎を保ちながら、
Eric Stanton や
John Willie といった20世紀アメリカのポップな感覚も取り入れつつ、春川ナミオというジャポニズムの影響も色濃く反映したアジア風のモチーフも多く描かれる。
無国籍であると同時にある特定のエキゾティックさをも感じさせる奥行きの深さは、現代美術においては他に類をみない。
ロンドン在住のSardaxは、当初は他の多くの無名匿名 Femdomアーティスト達と同様に、きわめて趣味的に己の内なる秘めた願望を満たすようなかたちで作品を描いていた。
それは英国紳士らしい上品さにつつまれてはいるけれど、得たいの知れないマゾヒズムの本質を詳らかにし、特定の鑑賞者にしか享受できない感動を与える。
Female Dominance のなんたるかをよく理解し、言葉ではなくイメージでそのメッセージを効果的に伝達する彼の手法がたまたま好事家たちの目にとまり、フェティッシュな媒体からのアクセスが舞い込む。
1990年に入ると、「Shiny」や「Skin Two」などといった、この世界では有名なメディアで頭角を現しはじめた。

そして活躍の場はヨーロッパを越えアメリカ、アジアへと広がっていく。
近代西洋絵画のように、個人の依頼主からの注文を受けて作品を製作する一方、独特に洗練された手法に磨きをかけ、Fetishワールドでは押しも押されぬ人気と地位を確実なものとした。
2007年に初の画集
The Art of Sardax が発売され、すぐに売り切れとなった。
コレクターにより稀少本としてAmazon マーケットプレイスから出品販売されており、かろうじて入手は可能ではあるが、およそ7万円ぐらいで取引されている。
Sardax Classics より

Sardaxが描くFemdomやマゾヒズムの幻想世界は実に多岐にわたっており、それらの多くは彼の感性や思想に負うところが大きいのだが、ファンから寄せられるアイデアも多い。

全世界からありとあらゆる独自のファンタジーやストーリーがネットを通じて集まり、Sardaxがそれらアノニム(匿名)なアブノーマル・イメージを再構築しているのである。
見方によってはグロテスクで、ナンセンスな、卑猥であったり、悪趣味に写りそうな光景も、偏見のないなめらかな視線のSardax の手にかかると、官美なエロスとしての新しい生命が吹き込まれる。
90年代半ば、敬愛していた春川ナミオと交流を結ぶ一方で、日本のメディアにも作品を投稿していた。
春川ナミオがペニス描写を極力避けているのに対して、Sardax の作品ではよく強調される。
男性優位性の象徴であるペニスを徹底的に虐めらることは、女性上位実現に欠かせないアクションでもあるのだ。

しかし一方で、これは男にとっては快楽にもなる。
普通の男だったらSEXで責めることによって得られる官能を、女性から責められることで感じてしまう。
それを屈辱として静かに受けとめることが、理性的なマゾヒズムなのだろうが、そんなことには滅多にならない。
どんな男だって、
アヘ顔 晒してしまうものなのだ。
Sardax にしては珍しい、麻縄とおぼしき緊縛のイメージ

喜びとも苦悩とも判別のつかない男たちの表情の奥に、本来触れることの出来ない倒錯美の質感を見ることができる。
マゾヒズムを具体的にも象徴的にも表現する、いかなる因習にも束縛されない自由でクリエイティブなそのスタイルは、Femdom アートに革新的な影響をもたらした。
明確に述べるのが困難な Female Domination への思いを、雄弁に物語る Sardaxの名人芸は、世界中のM男を魅了し続けている。


【関連エントリー】
*以下の記事で Sardaxのイラスト作品を何点か紹介しています。
■ 女王様の肖像画■ 毛皮を着たヴィーナス■ Sardax ~英国紳士の描く上品なミストレスたち ■ 顔面騎乗に市民権を与えた男
Sardax のオフィシャル・サイト

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