独創的で美しいものをデザインするには、多くのアイデアや選択肢が必要です。
それらを選ぶ理由や根拠も無数にある。
これを決定するのがアート・ディレクターの仕事となります。
今回僕は、昔から憧れていたこの種の仕事というか作業を初めて経験しました。
僕は子どもの頃、画家か漫画家になる夢を持っていました。
才能なくあきらめましたが、絵画や美術への強い興味はずっと抱いており、今回の体験はとても勉強になった。
絵やイラストを上手に描けなくても、グラフィック・デザインという領域ならば、なんとかなるだろうみたいな「甘い」考えを心のどこかに抱いていたのです。
これはとんでもない間違いでした。

この世界にもやはり独特の才能なりスキルや経験は求められる。
それは言ってみれば「決める勇気」みたいなものです。
僕だけの感じ方なのかもしれないけど、デザインの現場に正解というものはなく、「これ」と決めたものが「正解」と呼ばれるだけのことで、どれが正解になってもおかしくない。
例えば、「クライアントの決定が正解である」という非常につまらない意見がありますが、最初から正解が決まっているわけではないのです。
コラボレーションやブレインストーミングの過程で、弁証法的に落ち着くのが理想であり、その方が品質が上の場合が多い。
北川プロのパッケージデザインは、昔から春川ナミオのイラストを使用し、あとはタイトルと女王様の名前を入れるだけというとてもシンプルなフォーマットが定まっていました。
今回はこれにとらわれる必要もなく、僕の裁量で自由にまかされていたわけですが、あえてこの伝統的スタイルで行きたいと考えていました。だからイラストさえ決まれば、あとの作業にそれほど苦しむことはないだろうと。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、ジャケットのイラストは Sardaxにお願いしています。とても素晴しい作品を描き下ろして頂きました。
春川ナミオに捧げるようなイメージをという依頼内容で、僕は当初、額縁に入った絵画作品のように背景にレイアウトしてくれないかとお願いしていたのですが、ご覧のように粋な意趣返しで応えてくれています。
すでに現物がお手元に届いた方は「アレ?」と思われたことでしょう。
タイトル配置の作業も全て僕がやらせて頂きましたが、直前に少し変更しているのです。
7月1日に北川プロのホームページに載っていたデザインで印刷会社に一度データを納めたのですが、輪転機が回る前に差し替えてこのかたちとなりました。
ここでの僕の仕事はいわゆる「情報のデザイン」ということになります。
普通は、作品(DVD)のメッセージをどうやって有効に伝えることができるのかを考えるわけですが、今回の場合、メッセージ自体はとても恥ずかしくて、口にできないような類いのものです。
なので、本当は「わかりにくくしたい」、という気持ちがある。
そのわかりにくいコンテンツを「わかりやすく」伝えるという、オキシモロン(矛盾語法)のような世界を効果的に現すのに苦心したわけです。
ややこしくて、何を言わんとしてるんだかわかりませんよね?
ざっくばらんに言うと、タイトルをどう見せるかというお話です。
最初のレイアウトは、いたって平凡で、わかりやすい。これはこれで正解。
だけど、ここは前述した理由から、ちょっとひねってみたい。
そこで45度斜めにひねってみた。
この変更プランを印刷直前になってからお願いした時、北川さんは「ちょっと読みにくいね」とおっしゃいましたが、特に反対はしませんでした。
この時彼女が「これはわかりにくいから、ボツ」と言えば、普通に縦にまっすぐなタイトルレイアウトが「正解」となったのかもしれない。
今回は僕の判断を尊重して下さり、その「わかりにくさ」みたいなものが正解となったわけです。
どちらのデザインがより購買意欲をそそるのか?
こうした問題も、それを定義するクライアントなりデザイナーの思惑が前提となりますから、正解は無限にあるとも言えます。
この直前の変更を決断するには勇気がいりました。
高度なスキルを持つプロの知り合いに(イラストは見せずにタイトルは「アルジャーノンに花束を!」にとりかえて)こういうレイアウトって「あり」なんだろうか?と相談すると、
即座に
「素人っぽい」 と言われました。
このひと言が決めてとなり、タイミング的にはギリギリでしたが、変更したのです。
僕はしょせんシロウトなんだから、それでいいんだ。(←ひらきなおっただけ)
注意深く Sardaxのオリジナル画像を見つめていると、バックの筆づかいが斜めに入っており、まるでそこにタイトルを配置してくれと言わんばかりのように僕には見えました。Sardaxとそこまで厳密に打ち合わせたわけではありません。僕はただ、タイトルとキャプションなどを入れるスペースをあけてくれるようにお願いしただけです。
テクニカルにこれが良いとか悪いは言えても、感性の領域となると、それがなぜよいのか(あるいはいけないのか)?という言い方には普遍性がありません。
極論すれば、どっちでもいいわけです。
んなコト、どうでもいいか。 この長くてクダラナイ文章を最後までお読み頂いたあなたのご意見をお聞かせ下さい!(>_<)
タイトル文字のレイアウトは、初期と修正後では、どちらがよかったと思いますか?
美意識のはっきりしているマゾ花のレギュラーコメンテイターの皆さんもよろしく!
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でも実物を見なくてはよく分からないので、まずは北川プロから購入しなくちゃって感じです。