まさに絶妙のタイミングと言ってしまうと不謹慎に聞こえますが、急逝する随分以前からこの伝記が出版されることは知っていましたので、発売されたらすぐに買って読もうと思っていたのです。
まさかスティーブの死後に読むことになろうとは思ってもいませんでした...
彼も自分の死期を悟っていたのかもしれません。
著者は、スティーブ自身によって「僕の伝記を書いてほしい」と指名されたウォルター・アイザックソン。
この人は、雑誌「TIME」の編集長やCNNにも在籍していた高名なジャーナリストです。
古くからのMacユーザー、そしてスティーブ・ジョブズのファンならば、さして新しいエピソードはなかったものの、それでもかなり読み応えのある内容でした。
例えば、ウインドウズのインターフェースがマックを真似たものであるのは有名ですが、それを知った時のスティーブがビル・ゲイツを罵倒した時のやりとりが克明に描かれています。
時々マック(Apple)のオリジナルだと誤解されるGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)、つまりキーボードのタイピングでなく、マウスを使った直感的な操作性はそもそもはゼロックス社のパロアルト研究所が初めて開発したもので、スティーブもそれを模倣している。だからビルが「ゼロックスの技術を盗もうとしたら、スティーブ、君が先に盗んでいたんじゃないか」と言ったのには一理あるのです。
ちなみに、僕個人としては、どちらが先であるとか、いい悪いの問題ではなく、「どちらが使いやすかったのか?」 という視点で、スティーブ、すなわちアップルのMacintoshのほうが優れていたと思っている。 それでも、マイクロソフト社が Windows 1.0を発売するにあたっては、Appleからライセンスの供与をきちんと受けていたのだから、ビルも義理堅いところがあった。
その後訴訟問題にまで発展したこの件では、アメリカの裁判所が「パソコンのルック&フィールに著作権は認められない」という判断を下し、Appleはマイクロソフトに敗北し、現在のような状況になっているわけです。
このようにスティーブ・ジョブズをとりまく人間模様や彼のユニークな人間性と偉大さ、そして弱さなども含めてパソコン黎明期の歴史が豊富なエピソードと詳細な証言で構成され、現代の伝記としてとても面白く読める傑作となっています。
日本ではなぜか分冊で発売されるのですが、来月発売予定の続編(下巻)も楽しみです。
この伝記を元に
映画化への動きもすでに始まっているようです。
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