
単なるSEXの前戯として、道具を使用せずベッドの上だけのエロティックなプレイであれば特に問題はなかろう。しかし鞭や縄、猿ぐつわや針などを使用し、身体や精神に非日常的な負担をかけるセッションともなると、お互いにそれなりの覚悟と注意が必要になる。安全や衛生面に関する配慮はもちろん、不測の事態が発生した場合の対応策など、常に万全の体制で臨まなければならない。
けして興味本位や遊び感覚で不用意に行うべきものではない。当然相手の合意なしに行うのはもってのほかであり、その種の嗜好に興味のない人には会話すら慎重になるべきなのだ。これはトップやS、つまり責める側、支配する側だけでなく、ボトムやM、すなわち責められる側=マゾヒストにもあてはまり、好みの女王様タイプだからといって会ってすぐ鞭を渡して「打ってくれ」とは言えない。第一それは失礼だし、仮にその相手がサディステックで魅力的な女性であったとしても、加減を知らない素人であれば、重大な事故につながりかねない。
クラブや出会い系などで知り合った、つまりよく知らない者同士で行う場合、きちんとした打ち合わせとセーフ・ワードの取り決めなど、どこまでが許される行為なのかを見極めておく。基本は、しっかりとした信頼関係のもとに行われなければならない。例えプレイだけの割り切った関係であったとしても、深い信頼関係が構築されているのが理想である。
苦労して口説いてセックスする以上の手間と努力。そこまでした上でのセッションによってもたらされる満足や快感は、普通でノーマルな性愛からは得られないほど高い次元の、素晴らしいものとなるのは、ある意味で当然とも言える。表面的な支配と服従というシナリオの中で、どこまでリアルな段階まで進むことができるのか。信頼関係の増幅とともに、BDSMのミステリアスな世界には無限の可能性が広がっている。
以上のことからも、BDSMに関わる行為や関係性は、けして恥ずべきものでも軽蔑される類いのものでもなく、高度に知的で豊かな才能と経験に裏付けされた、尊厳と敬意を払うべきものなのである。当然のことながらそれなりに費用もかかる。お金さえかければよいというわけではないが、他の趣味の場合と同様、予算をけちっていては充実した歓びは得られない。
恋人や配偶者の理解が得られない場合もあるだろう。それ以前にカミングアウトですら困難な状況の方が多いかもしれない。理想と現実は異なる。てっとり早いのはSMクラブなどへ行くことになるのだが、その場合でもお互いの信頼と敬意を確認することを忘れてはならない。
信頼と敬意。この二つは常にレスペクトされるべき価値観だと思っている。
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