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マゾヒズムに花束を!

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緊縛の文化史・日本人の知らない日本美 

緊縛の文化史 表紙

 Master Kという人物の名を知ったのは今からちょうど3年前、有末剛さんとお会いした時でした。

 札幌で行われた緊縛ライブショーの後で一緒に飲んだ時、「アメリカにも凄い縄師がいるんですよ」とThe Beauty of Kinbakuというその謎めいた人物の著作の存在を知らされた。

The Beauty of Kinbaku

 ほどなくして僕はその原書を入手して軽く流して読んでみたのですが、緊縛をSMやポルノグラフィーのカテゴリーの一つとしてではなく、日本の歴史や伝統文化という観点で真っ向からとらえた、とても誠実な内容に感銘を受けました。

 人間国宝・有末剛 さんはすでに古くから、そういった目線での緊縛を海外へ熱心に紹介されてきたお一人です。

 この本で述べられているコアな部分は、昔から須磨利之(=美濃村晃・喜多玲子)や濡木痴夢男など、近年では他界された明智伝鬼氏や団鬼六さんなどが折に触れて言及されていたことでもあります。

 つまりSMにおける心のたたずまいには、それが縄であろうと鞭であろうと(あるいは顔面騎乗であろうとも!)、それを行う両者の濃密なコミュニケーションが不可欠であり、その中に美や芸術性を見いだすのはなんら不自然なことではないのだと。

 だからマスター "K"は内容的にさほど新しいことを言っているわけではありませんが、外国人でありながらこれほど日本の文化、特に緊縛をフィルターとした日本人の精神面を理解しているとは驚きでした。

 現代の日本人ですら見失いがちな伝統的な美徳を、アメリカ人らしいプラグマティックな思想を加えながら、丁寧に解説されています。

 マスター KはSMの世界のドナルド・キーンみたいな人だと思います。ドナルドさんも第二次世界大戦中、当時の敵性語であった日本語に惚れ込んで通訳や翻訳を行っていました。

 自分の好きなものであれば、ネガティヴな周囲の目を恐れず真摯に向き合うことの意義と困難を明確に意識して突き進む。

 レベルは全然違いすぎるけれど、マゾヒズムという変態性をこよなく愛する僕にも共感できるものが、このお二人にはあったりする。

 ロサンジェルス在住のマスター Kは、緊縛のルーツを縄文時代の稲作文化にまで遡り、江戸時代に発達した捕縛術、歌舞伎や浮世絵(春画)での表現性の考察、伊藤晴雨を端緒とする女性緊縛の歴史研究、そして現代におけるサブカルチャーとしての緊縛観察の集大成として本書をまとめあげました。

 しかし彼の本国アメリカでは嗜虐的なるものへの偏見や差別が激しいため、匿名でひっそりとこの種の活動を行っていたようです。日本に留学し、まるで茶道か生け花でも学ぶかのごとく、日本の縄師から緊縛の手ほどきを受けた経験もあるそう。

 僕は異文化交流事業を通して様々な国々の留学生たちとおつきあいしてきた経験がありますが、彼らの視線や声によって日本文化の知られざる一面の良さをあらためて認識させられることがなんと多かったことか。

 SMについてもこうした感動を味わえたのは新鮮な喜びでもありました。

 「マゾヒズムの発明」という、マゾヒズムそのものをアカデミックに扱った書はごく少数ながら存在していましたが、日本の緊縛をテーマに、これほど学術的かつ体系的に仕上げた一冊はかつてなかったように思います。

 すでに世界65カ国でベストセラー販売を記録している書でもあり、待望の邦訳がこのたび出版されたばかり。

 先日、新聞の記事下広告が堂々と掲載されていたのを目にしてのけぞったりして(^^)

緊縛の文化史 新聞広告

 この種のタイトルを新聞のフロントページで目にすることもなかったような気がする。


 これに合わせて著者のマスター Kが緊急来日し、23日にライブトークを行うそうです!
(紀伊國屋書店新宿南店、3F・ふらっとすぽっと)

 さらにギャラリー新宿座では、「KINBAKU: Form & Emotion ―日本人の知らない日本美」 と銘打ってマスター Kの写真作品展とイベントが開催される予定。

 *写真展会期は、10月23日 (水) ~ 11月3日 (日)


 すでに「Kinbaku」は、国際語としても定着した日本文化を代表するキーワードになってはいましたが、青い目を通した日本古来の美意識や価値観を、色眼鏡を外して見つめ直すよいきっかけとなることを願っています。


 


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[ 2013/10/19 22:03 ] トピック | トラックバック(-) | CM(0)
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